人類学:人間社会は自然現象に対して超自然的な説明を用いる
Nature Human Behaviour
2023年4月4日
114の社会の歴史的・民族誌的な文献の分析から、超自然的な信仰は、社会的な現象よりも、嵐や病気の流行といった自然事象を説明するのによく使われることが明らかとなった。このことについて報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。今回の知見はまた、超自然的な信仰の起源に関するさらなる洞察を与えるものである。
超自然的な信仰は、世界についての我々の理解のギャップを埋めるために生まれたと考えられている。1つの有力な説では、ある現象に関する明確な原因がなく、社会が超自然的な存在や超自然的な力が地球上の事象の原因であると示唆される場合に、そのような信仰が生まれるとされている。
Joshua Jacksonたちは今回、社会の複雑性の異なる、大規模な都市社会から血縁に基づく小規模な遊牧民集団に至る、世界の114の社会を詳述した18世紀~20世紀の民族誌の解析を行った。彼らは、「超自然的な説明」とは、ある事象が超自然的な存在(神や魔法使い)や超自然的な力(カルマや悪意に満ちた目)に帰するものと定義した。解析の結果、分析の対象とした1つを除く全ての社会で、超自然的な説明が記述されていること、そうした説明が、社会的な現象(盗みや殺人)に対するよりも自然現象(嵐や地震など)に対するものに関して多く見られることが見いだされた。ただし、このことが、これらの事象の頻度と関連している可能性を示す証拠は得られなかった。著者たちは、分析対象となった社会の96%が病気に対して、92%が食料不足に対して、90%が自然災害に対して、超自然的な説明を用いていると報告している。一方、戦争に対して67%、殺人に対しては82%、盗みに対しては26%の社会が、超自然的な説明を用いているに過ぎなかった。著者たちはまた、社会現象に対する超自然的な説明は、人口、金銭、陸上移動の多い社会、技術の専門化が進んだ社会でより一般的であることを示唆する証拠も見いだしている。
Jacksonたちは、今回得られた知見は、ある現象に対して人間による明白な要因が存在しない場合に、人間は超自然的な説明を用いる可能性が高いこと示唆していると主張している。今後の研究では、超自然的な説明と人間の協力、懲罰、社会的一体性のタイプとの関連性を示す証拠を検討すべきであると述べている。
doi:10.1038/s41562-023-01558-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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