物理学:「時間的スリット」を通した光波のスクイージング
Nature Physics
2023年4月4日
短い時間をおいて開く2つの小さな隙間を通る光の効果を調べる実験では、空間的にあまり離れていない2つの小さな隙間を光が通る際に観測されるものに似た効果が生まれる。こうした現象について報告する論文が、今回Nature Physicsに掲載される。
空間的に離れた2つの小さな隙間を波が通る二重スリット実験は、1802年にトーマス・ヤングによって初めて行われ、スリットの後方に生じたパターンから、光が波としてふるまうことが明らかになった。この二重スリット実験の時間版が可能かどうか調べる取り組みがなされてきたが、これはまだよく分かっていない。
今回R Tiroleたちは、時間領域の二重スリット実験について報告し、光のビームが近赤外周波で時間回折を生み出し得ることを示している。著者たちは、2つ隙間を使って光を通す代わりに、反射率が時間的に2倍に変化する媒質が反射する光の干渉パターンを調べた。彼らは、強いレーザーパルスを使ってオン・オフできる鏡を作ったレーザーが薄層に当たると、その材料の光学特性が短時間変化するため、この期間に到達する光と物質は、それ以前とは異なる相互作用をする。著者たちは、透明だが金属になる点に近い半導体を用いた。レーザーパルスが到達すると、この材料は短期間だけ鏡になる。このようにして著者たちは、「時間的スリット」のようにふるまう2つの鏡を作ったのである。
著者たちは、この「時間スリット」から来る2つ以上の光波の相互作用によって生じるパターンを測定した。二重スリット実験の従来のパターンとは異なり、こうしたパターンは、空間的に生じるのではなく周波数的に生じる。
doi:10.1038/s41567-023-01993-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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