環境科学:スクールバスのアップグレードは学校の出席日数の増加につながる可能性がある
Nature Sustainability
2023年4月11日
古くなったスクールバスを取り換えることによって、高濃度のディーゼルエンジンの排ガスへの生徒の曝露(こうした曝露は、健康に影響を及ぼして、欠席につながる可能性がある)を減らすことができ、米国全体で学校の1年当たりの出席日数を130万日増やすことができる可能性があることを報告する論文が、Nature Sustainabilityに掲載される。今回の知見によって、各学区のスクールバスのアップグレードを支援する米国の環境保護庁(EPA)のプログラムを継続するための証拠が得られた。
米国では、約2500万人のさまざまな年齢の生徒が、毎日バスに乗って学校に通っている。バスの車内に入り込むディーゼルエンジンの排ガスによる汚染によって、外気より、最大で10倍高い汚染度の空気に生徒がさらされる可能性がある。この汚染は、ぜんそくを悪化させ肺機能を低下させて、生徒の欠席につながる可能性がある。EPAのプログラムは、学区に資金を与えて、保有するバスを、汚染物質を捕らえるより優れた技術を使った新しいバスに置き換えたり、既存のバスを改良したりするのを促進している。EPAのプログラムは、ランダムな抽選方法を通して選ばれた米国全体の各学区に、2012年から1年につき約700万米ドルを助成している。
今回M Peddeたちは、2012年から2017年のEPAの抽選方式の助成プログラムの前後のデータを解析し、助成を受けた383学区と受けなかった2400を超える学区の学校の出席率を比較した。平均すると、EPAの助成を受けた学区では、抽選で選ばれた後の年の出席率が、0.06パーセントポイント高くなった。これは、生徒数が1万人の学区で、学年度ごとの出席者が1日につき6名増えたことに相当する。バスの利用者数がより多い学区や保有するバスがより古かった学区ほど、出席数の増加がより大きかった。著者たちは、生徒数が1万人の学区で、利用者数が多い学区では14人、1990年以前製造されたバスを置き換えた学区では45人、1日当たりの出席者が増えたと思われると算出している。
著者たちは、今回の結果を外挿して、2000年以前に製造された米国全体のスクールバスを、新しいバスや改良されたバスに置き換えれば、学年度ごとの出席者が、130万人・日増える可能性があると推定している。
doi:10.1038/s41893-023-01088-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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