がん:多発性骨髄腫で、移植のために幹細胞の動員を促進
Nature Medicine
2023年4月18日
骨髄のがんの1つである多発性骨髄腫の患者80人に新規な薬剤であるモチキサフォルチドを1回注射したところ、採取・保存した後に自家移植するのに最適な数の幹細胞が90%以上の患者で安全に動員されたという第3相臨床試験の結果が報告された。この方法は、多発性骨髄腫患者の治療転帰を改善するかもしれない。
多発性骨髄腫の患者自身の健康な幹細胞を採取して保存し、大量化学療法を行った後に再注入すれば、従来の化学療法だけを行った場合に比べて全生存期間が改善する。自家造血幹細胞移植(ASCT)と呼ばれるこの方法の有効性は、十分な数の造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)を採取できるかどうかにかかっており、HSPCは通常は血液から採取される。採取して貯蔵するためにHSPCを血液中へ動員するのに使われる標準的な薬剤はG-CSFで、これは骨髄での白血球と幹細胞の生産を助けるタンパク質である。しかし、多発性骨髄腫患者の40~50%は、G-CSFを数日間投与してもASCTに適した数の幹細胞を生産できるようにならない。モチキサフォルチドはケモカイン受容体CXCR4の選択的阻害剤で、健常者の循環血中のHSPC数を増やすことが第1相臨床試験で明らかにされている。
Z D Creesらは、多施設第3相試験の一環として、ASCTの前にHSPCの動員を図っている多発性骨髄腫患者122人で、モチキサフォルチドとG-CSFの併用の安全性と効果をプラセボとG-CSFを併用した場合と比較した。モチキサフォルチドとG-CSFの併用は安全で、忍容性も良好であるという結果が得られ、治療中に発生した有害事象のほとんどは短時間しか持続しなかった。G-CSFに加えてモチキサフォルチドを1回投与した場合、多発性骨髄腫患者の93%(80人)でASCTに適した数のHSPCが動員されたが、それに比べてプラセボとG-CSFの併用投与では26%(42人)だった。さらに、モチキサフォルチドとG-CSFを併用した場合は自己再生と再分化の促進に関連する未分化HSPCが選択的に大量動員することも示された。
これらの知見は、迅速、安全で忍容性も良好な新しいHSPC動員方法を示しており、この方法は幹細胞移植などのHSPCを用いる他の遺伝子治療のためのHSPC採取能力を大幅に改善する可能性があると、著者らは述べている。
doi:10.1038/s41591-023-02273-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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