社会科学:COVID-19が米国の刑務所における人種間の不平等を拡大した
Nature
2023年4月20日
米国の刑務所における人種格差が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の最初の年に増幅したことを明らかにした研究について報告する論文が、今週のNatureに掲載される。今回の研究は、米国の刑事司法制度に見られる数々の不平等に関する知見をもたらし、この傾向を引き起こしていると考えられる機構を浮き彫りにしている。
COVID-19パンデミックの最初の年に米国の受刑者の総数が少なくとも17%減少したことが過去の研究で明らかになっている。しかし、人種を記録する方法が刑務所や州によって異なっているため、米国の刑務所制度における人種格差を引き起こしている機構を解明することは困難だった。
今回、Brennan Kleinらは、警察との関わり(police encounter)、訴訟手続、受刑者数に関する州レベルの情報を含むデータを米国内の全50州とコロンビア特別区のそれぞれの矯正局から入手し、あるいは情報公開法(Freedom of Information Act)に基づく開示請求によって入手して、それらを基に、新しい公開データセットのキュレーションを行った。Kleinらは、米国の刑務所の収監者数が減少する中で、黒人とラテンアメリカ系の収監者の割合が増加したことを報告している。黒人収監者の割合は、COVID-19直前の7年間で41.6%から38.9%に減少したのに、COVID-19パンデミック当初の9カ月間に0.9%増加したのだ。
刑務所における白人収監者の割合が増加し、黒人収監者の割合が減少するという傾向は、数十年前から続いていたが、この傾向を覆すパターンが今回の研究で観察された。この新たなパターンは、ほぼ全ての州の刑務所システムに見られ、こうした人種格差がなければ、2021年1月の時点の黒人収監者は、実際よりも約1万5000人少なくなったはずだとKleinらは推定している。また、Kleinらは、黒人収監者の刑期が白人収監者よりも著しく長くなっており、そのことによって、今回の研究での観察結果を説明できるかもしれないと述べている。
同時掲載のJessica EaglinのNews and Viewsは、今回の研究で生成されたデータセットを「注目に値する」と評している。Kleinらは、公平性を高めるという目標に向かって、量刑慣行だけでなく、刑事法制度の広範な改革を行うことが、今後の課題だと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-023-05980-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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