物理学:エビの白い縞模様が輝く仕組み
Nature Photonics
2023年4月25日
アカシマシラヒゲエビの鮮やかな白色発色は、イソキサントプテリン小分子からなるナノサイズの球状粒子が詰まった極薄層に起因することを示唆する報告が、Nature Photonicsに掲載される。この発見は、生物に着想を得た新しい極薄白色コーティングの開発を可能にするかもしれない。
非常に薄い白色コーティングを作製することは、光学における課題であり、センサー、太陽電池、ディスプレイの開発に影響を及ぼす。これまで、最も一般的な白色剤は、酸化チタンや酸化亜鉛のナノ粒子を高密度で配列させたものである。しかし、健康上の懸念から、生物に着想を得た有機材料への置き換えがますます求められるようになっている。高密度充填された薄層材料から効率的な白色発色を得るための生物学的な解決策はほとんどない。しかし、アカシマシラヒゲエビ(Lysmata amboinensis)の外皮、尾部、触角、顎脚には、極めて鮮やかな白色領域が存在し、これらは非常に薄い色素細胞によって生成される。
今回、Benjamin Palmer、Dan Oron、Lukas Schertelらは、顕微鏡法、光学測定、シミュレーションを組み合わせて、アカシマシラヒゲエビの外皮の鮮やかな白色縞模様を観察し、ナノ球が密に詰まった厚さわずか百万分の数メートルの非常に薄い層を特定した。薄膜の中に球を密に充填すると、「光学的クラウディング(optical crowding)」と呼ばれる現象によって、光の散乱が少なくなる。しかし、アカシマシラヒゲエビの白い縞模様は、極端に密な粒子配列によって、すべての色の光を最高で80%反射する。著者らは、密な粒子配列にもかかわらず、ナノ球中でイソキサントプテリン分子がスポーク状に配置されているため、散乱を低下させずに、光の散乱効率の向上が可能であることを見いだした。
著者らは、今回の発見が、光散乱物理における光学異方性の役割について新たな知見をもたらすとともに、新しい生体適合性極薄白色コーティングの設計につながり得ると示唆している。
doi:10.1038/s41566-023-01182-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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