気候変動:甚大な影響をもたらす熱波の被害リスクが最も高い地域を明らかにする
Nature Communications
2023年4月26日
全世界を対象とした研究から、記録破りの極端な高温が発生する統計的確率が高く、その影響を最も大きく受ける地域が明らかになった。前例のない極端な高温の発生と社会経済的な脆弱性の増大という2つの要因が合わさって、特定の地域(アフガニスタン、パプアニューギニア、中米など)で、稀に見る熱波の被害リスクが特に高いことが示唆された。この研究について報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。著者らは、脆弱な地域の政策当局者が、極端な気候による死亡リスクを減らすために、適切な行動計画を検討することを提言している。
人為起源の気候変動の下で熱波の発生頻度が上昇しており、全世界の超過死亡者数が数千人単位で増加する恐れがある。地域レベルの極端な高温に対する脆弱性は、社会経済的要因(急速な人口増加、不十分な医療サービス、エネルギーの供給不足など)に大きく依存している。そのため、開発が進んでいない地域の方が、極端な熱波に対して脆弱で、十分な備えができていない傾向がある。
今回、Vikki Thompsonらは、極値統計学(希少事象の再現期間を推定する方法)と気候モデルや観測から得られた大規模データセットを用いて、地球上で、気温の記録が塗り替えられる確率が最も高い地域、すなわち極端な高温の被害リスクが最も高い地域がどこなのかを明らかにした。そして、熱波の被害リスクが最も高いホットスポットとして、アフガニスタン、パプアニューギニアと中米を挙げて、その理由として、これらの地域で人口が増加しており、医療が十分に行き渡っておらず、エネルギー源が不足していることを示した。また、Thompsonらは、極端な熱波が世界のどこででも発生し得るという見方を示している。今回の研究では、1959〜2021年に、評価対象地域(ただし、データの信頼性が低い地域は除外)の31%で、統計的確率の低い極端な事象(例えば、2021年の北米西部の熱波)が発生したことが分った。
Thompsonらは、現在の観測記録をもとに発生確率が低いと考えられている稀な熱波に対する備えが、世界中のあらゆる地域で必要になっているという見解を示している。
doi:10.1038/s41467-023-37554-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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