天体物理学:超大質量ブラックホールの理解を深める新しい画像
Nature
2023年4月27日
銀河M87の中心に位置する超大質量ブラックホールを取り囲むリング状構造の観測結果を報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この知見は、ブラックホールの特性に関する我々の理解を深める可能性がある。
宇宙に存在するほとんどの大型銀河の中心に超大質量ブラックホールが存在し、エネルギーが噴出しているという学説が提唱されている。銀河の一種である活動銀河は、中心部分(活動銀河核)が周囲よりはるかに明るく、塵とガスがブラックホールに落下(降着)する際に放出する光とエネルギーのジェットが原因だと考えられている。この活動銀河核に作用する物理機構を突き止める上で、超大質量ブラックホールの特性を調べることは重要だ。ブラックホールへの降着とブラックホールジェット形成の研究では、地球の近傍(約5400万光年先)に位置する銀河M87が最も重要な調査対象となっている。
今回、Ru-Sen Lu、台湾中央研究院天文及天文物理研究所の浅田圭一(あさだ・けいいち)、Thomas Krichbaum、国立天文台水沢VLBI観測所、総合研究大学院大学の秦和弘(はだ・かずひろ)らは、2018年の観測によって得られたM87の新しい高解像度画像を発表した。この観測は、世界の複数の観測地点を結んだグローバルミリ波VLBI観測網(GMVA) によるもので、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)のフェーズドアレイやグリーンランド望遠鏡(GLT)によって補完された。超大質量ブラックホールの周辺領域の画像には、強力なジェットを噴出するリング状の構造が示されている。このリング状構造は、2017年のイベントホライズンテレスコープによる観測結果による推定よりも約50%大きいと評価され、ブラックホールへの降着流の領域と解釈された。また、今回の観測結果からは、降着流に関連した風の存在可能性も示唆された。
doi:10.1038/s41586-023-05843-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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