環境:アマゾン熱帯雨林の樹木種間に乾燥耐性の違いが見つかった
Nature
2023年4月27日
アマゾンの熱帯雨林では、樹木種によって乾燥耐性が異なっており、そのことが、水の状態が変化した時の回復力に影響する可能性のあることを明らかにした論文が、Natureに掲載される。この結果は、森林に対する干ばつの長期的な影響に関する過去の評価が過小だった可能性を示唆している。
熱帯林では、気温の上昇、降水量の変化と極端な気候事象の頻発化を原因として、干ばつの頻度が上昇している。気候ストレスは、約1万6000種の樹木が生育するアマゾン熱帯雨林で特に顕著なものになっている可能性がある。近年、アマゾン川流域全体で繰り返し発生する干ばつのために樹木の枯死率が上昇しているが、気候変動下における森林の水ストレスへの対処能力は、あまり分かっていない。
今回、Julia Tavaresらは、アマゾン熱帯雨林の森林調査区(11カ所)に生育する樹木種(129種)について、通水形質(干ばつなどのストレスの多い水条件下で生存できる通水機能の閾値)を観察した。今回の研究では、この地域の降水勾配を網羅するように森林調査区が選定された。Tavaresらは、通水欠損(植物体内の水輸送システムの障害)を測定し、樹木種間に差があることを明らかにした。この樹木種間の違いは、樹木種の生育地の標準的な降水量に関連しており、降水量の多い森林に生育する樹木は、乾燥に対する抵抗力が弱く、降水量の少ない森林に生育する樹木は、乾燥に対処できるようになっていた。また、通水限界(植物が通水欠損を起こす直前の閾値)付近で生育する森林の枯死率が高くなる傾向も判明した。
Tavaresらは、アマゾン西部(例えば、ペルーの一部)とアマゾン南部(例えば、ブラジルの一部)の森林は、既に通水限界に達している可能性があるため、将来の気候変動に対して最も脆弱になっている可能性があるという見解を示した上で、既に減少し始めているアマゾンの炭素吸収源が、気候変動の継続によって、さらに脅かされることになると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-023-05971-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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