工学:仮想現実で花の香りを嗅ぐ
Nature Communications
2023年5月10日
ローズマリー、モヒート、パンケーキ、ドリアンなど、ユーザーがいくつかの異なる匂いを嗅げるように設定された小型のウエアラブルVR(仮想現実)インターフェースについて報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。このデバイスは、匂いを局所的に素早く正確に発生させることができ、VRの世界とワイヤレス接続して、より現実的で没入感のあるユーザー体験を実現している。著者たちは、今後の研究によっては、ユーザーが匂いを感じることのできるビデオゲーム、4D映画やVRを使った教育環境が登場するかもしれないと述べている。
これまでのヒューマンマシンインターフェースシステムは、VRにおいて視覚、聴覚、触覚をシミュレーションするために開発されており、嗅覚をシミュレーションするシステムの設計は困難だった。現在の嗅覚インターフェースは、ボトル入りの液体香料を数多く用いるために大きくて扱いにくく、あるいは硬いVR用ヘッドセットを有線接続しなければならないために、実用性の点で限界があった。ウエアラブルな匂い発生装置として、軽量で、柔軟性があり、ワイヤレスで、さまざまな匂いを発することができ、匂いの強さをプログラムできるようなものは作られていなかった。
今回、Xinge Yu、Yuhang Liらは、匂いを感じるためのウエアラブルなワイヤレスインターフェース(2種類)を設計した。これらのインターフェースには、ミリメートルスケールの匂い発生装置が組み込まれており、第1のインターフェースは、鼻の下の皮膚に直接装着するもので、2種類の匂いを発することができ、第2のインターフェースは、ソフトマスク型で、9種類の匂いを発することができる。著者らは、30種類の匂い(パイナップル、ショウガ、緑茶、キャラメル、キャンディーなど)を使って、このインターフェースのカスタマイズ性を実証した。この微小な匂い発生装置には、香料入りパラフィンワックスが組み込まれており、このワックスを加熱することで、特定の匂いを局所的に素早く(最短1.44秒で)正確に発することができる。
著者らは、今回の研究の応用例として、香りのメッセージを伝えるという代替的なコミュニケーション、情動記憶の想起、VR世界でのユーザーの相互作用の増進などを挙げている。
doi:10.1038/s41467-023-37678-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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