医学研究:COVID-19の重症化に関連した遺伝的要因が明らかになる
Nature
2023年5月18日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の重症化に関連した遺伝的バリアントが新たに特定されたことを報告する論文が、Natureに掲載される。この知見は、これまでの解析結果が基盤となった新たな成果であり、COVID-19重症化の背景になっている要因の理解が深まり、新薬開発につながる標的分子が浮き彫りになった。
これまでのGenOMICC研究によるゲノムワイド関連解析で、重症型COVID-19患者(約1万人)の重症性に影響しているかもしれない遺伝的要因に関する知見が生み出されてきた。その最新の成果が、今回のKenneth Baillieらの論文であり、重症型COVID-19患者(2万4202人)のゲノムデータの解析によって重症化の根底にある49個の遺伝的バリアントが特定された。そのうちの16は今回初めて報告された。Baillieらは、治療薬の開発可能性を探るため、この解析結果を遺伝子発現データとタンパク質発現データと組み合わせて、114の薬物標的候補を特定した。その中には、体内に侵入したウイルスや炎症過程に対する身体応答に関与する遺伝子に関連した標的分子が含まれている。
Baillieらは、既存の薬剤を転用すること(リパーパシング)によって、これらの経路を標的にして重症型COVID-19患者の治療に役立てられるかもしれないという考えを示している。例えば、今回の研究で、JAK1をコードする遺伝子と重症型COVID-19との関連が明らかになった。JAK1は、炎症性シグナル伝達に関与するタンパク質であり、関節リウマチ治療薬バリシチニブの標的であるため、薬剤転用の可能性が浮上している。今回の研究結果は、我々の理解を深めるだけでなく、新たな知見をもたらしており、その一部は、治療法への応用につながる可能性がある。
doi:10.1038/s41586-023-06034-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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