工学:使用済み紙おむつを建材に再利用して低コスト住宅を建てる
Scientific Reports
2023年5月19日
使用済み紙おむつを細断処理して、住宅用建材のコンクリートやモルタルに含まれる砂の代替品として使って平屋建て住宅を建てる場合、代替率が最大8%までは、建材の強度に有意な低下が見られないことが明らかになった。このことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。著者らは、紙おむつ廃棄物を低・中所得国の低コスト住宅の建築材料として使用できる可能性を指摘している。
紙おむつは、通常、木材パルプ、綿、ビスコースレーヨンやプラスチック類(ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)を原料として製造されている。使用済み紙おむつの大部分は、埋め立て処分か焼却処分されている。
今回、Siswanti Zuraidaらは、紙おむつ廃棄物を洗浄、乾燥、細断してからセメント、砂、砂利、水と混ぜ合わせて、コンクリートとモルタルの供試体を作製し、28日間にわたって硬化させた。Zuraidaらは、紙おむつ廃棄物の配合率の異なる6種類の供試体に圧縮力を加えて、破壊した時の荷重(圧縮強度)を測定した。そして、インドネシアの建築基準に準拠して床面積36平方メートルの住宅を建設するために必要とされる一定種類の建築材料について、砂を紙おむつ廃棄物に置き換えることのできる割合の最大値を算出した。
その結果、3階建て住宅の柱や梁に用いられるコンクリートに必要な砂の最大10%を紙おむつ廃棄物で代用できることが判明した。この割合は、平屋建て住宅の場合には最大27%まで増加した。また、間仕切り壁のモルタルに必要な砂の場合は最大40%、床材や庭の舗装用のモルタルの砂の場合は最大9%だった。以上の結果をまとめると、床面積36平方メートルの平屋建て住宅を建設するために必要とされるコンクリート建材とモルタル建材の全てに含まれる砂の最大8%を紙おむつ廃棄物で代用でき、1.7立方メートルの廃棄物削減効果があることが判明した。
Zuraidaらは、今回の知見をより広範囲に具体化するためには、おむつ廃棄物を大規模に収集、消毒、細断するプロセスの開発に政府と廃棄物処理業界のステークホルダーが関与することが必要だと指摘している。さらに、建築法規を改正して、おむつ廃棄物を建築材料として使用できるようにする必要があると考えられる。
シュプリンガー・ネイチャーは、国連の持続可能な開発目標と、学術論文誌や書籍に掲載されている関連情報や証拠の認知度を高めることに尽力しています。このプレスリリースに記載されている研究は、SDG 12(つくる責任つかう責任、Ensure sustainable consumption and production patterns)に関係しています。詳細については、こちらを参照してください。(https://press.springernature.com/sdgs/24645444)
doi:10.1038/s41598-023-32981-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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