古生物学:スペインで発見された化石断片はスピノサウルス科恐竜の新種だった
Scientific Reports
2023年5月19日
スペインのカステリョンで出土した恐竜の化石標本について、スピノサウルス科の新種だと提案した論文が、Scientific Reportsに掲載される。このように新種の恐竜である可能性が明らかになったことは、イベリア半島が、中型と大型のスピノサウルス科恐竜の多様性が高い地域であった可能性を示唆しており、スピノサウルス科の起源と進化を解明する手掛かりとなる。
スピノサウルス科は、複数の恐竜分類群によって構成されており、大型で、二足立ちをして、肉食性のものが多い。スピノサウルス科恐竜の例としては、スピノサウルスとバリオニクスがよく知られている。スピノサウルス科恐竜はヨーロッパに出現し、その後アフリカやアジアに移動したと考えられているが、スペインに存在していたことを示す証拠のほとんどは歯の化石に基づいている。
今回、Andrés Santos-Cubedoらは、過去にスペインのアルシリャス・デ・モレラ累層で発見された化石断片(1個の右顎骨、1本の歯、5個の椎骨)を分析し、前期白亜紀の後期バレミアン期(1億2700万~1億2600万年前)のものと判定した。また、Santos-Cubedoらは、これらの化石を基に、この恐竜標本の体長を約10~11メートルと推定し、この標本と他のスピノサウルス科恐竜のデータを比較して、他種との進化的類縁関係を調べた。
Santos-Cubedoらは、この標本と他のスピノサウルス科恐竜の比較分析に基づいて、この標本をスピノサウルス科恐竜の新属新種と判定し、Protathlitis cinctorrensisと命名した。属名のProtathlitisは、「チャンピオン」を意味するギリシャ語で、種名のcinctorrensisは、この標本が出土した町の名前Cinctorresにちなんでいる。
Santos-Cubedoらは、この新種が、スピノサウルス科恐竜が前期白亜紀のローラシア大陸(北半球に存在したとされる広大な大陸)に出現し、ヨーロッパ西部に2つの亜科が生息していたことを示しているのかもしれないという考えを提示している。その後、スピノサウルス科恐竜は、アフリカやアジアに移動して多様化した可能性がある。ヨーロッパではProtathlitisなどのバリオニクス亜科が優勢で、アフリカではスピノサウルスなどのスピノサウルス亜科が最も多かった。
doi:10.1038/s41598-023-33418-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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