環境保全:インドのトラの保護が炭素の貯蔵に役立つ
Nature Ecology & Evolution
2023年5月26日
インドでトラを保全するために森林の保護を強化したところ、森林の消失が避けられた結果として、100万メートルトンを超える二酸化炭素の排出が回避された可能性がある。このことを報告する論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。
インドには、野生のトラ(Panthera tigris)が世界で最も多く生息している。同国の国立トラ保全局(National Tiger Conservation Authority)は、2005年の発足以来、全国の52地区をトラ保護区として指定してきた。こうした地区は既に保護区になっていたが、トラ保護区として指定されたことにより、森林保護の監視と執行が強化されることになった。トラ保護区には、林産物の採取の規制、森林破壊の助長要因の抑制、そして保護区内コミュニティーの持続可能な生計の促進を図る保全計画の立案が求められる。
Aakash Lambaらは、トラ保護区と、その上乗せの保護がない保護区とで、森林破壊率の比較を行った。ヒトによるかく乱や貧困指数、地理的・気候的変数など、森林消失の他の助長要因を考慮に入れると、調べたトラ保護区45カ所のうち11カ所で、保護の強化がなかった場合に想定されるよりも大幅に森林破壊が減少したと推定された。これにより、2007~2020年に避けられた正味の森林消失は、5802ヘクタールに上ることが示唆された。これは、正味約108万メートルトンの二酸化炭素の排出回避に相当する。Lambaらは、この回避された森林破壊は、約624万ドル(約6億8600万円)のカーボンオフセットの価値があり、インドの回避された二酸化炭素排出の社会的コストから、生態系サービス9200万ドル(約101億2000万円)分に相当する可能性があると示唆している。
Lambaらは、今回の知見が、効果的な監視と管理の加わった保護区が種の保全と気候目標の両方にどう役立ち得るのかを示す一例になるのではないかと考えている。
doi:10.1038/s41559-023-02069-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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