環境:全世界の女性の環境保護者に対する暴力の分析
Nature Sustainability
2023年6月6日
環境紛争に関する世界的データベースから得られた523事例の分析に基づいて、女性の環境保護者は、殺人、強制退去、抑圧、刑事訴追、肉体的ハラスメントの犠牲者であったことを明らかにした論文が、Nature Sustainabilityに掲載される。この問題は、主に中南米、アジア、アフリカに集中しているが、北アメリカやヨーロッパでも起こっている。
一般的に環境紛争は、輸出のために天然資源を採取する事業によって、地域社会の文化的存在や物理的存在を脅かす土地の収奪や環境破壊が生じる際に起こる。暴力的な報復に直面している環境保護者が女性の場合、検閲や資料不足が原因で事件が記録されないことが多い。その結果、女性の環境保護者に対する暴力は、大きく過小評価されている。
今回Dalena TranとKsenija Hanačekらは、水、化石燃料、農業、森林破壊を巡る紛争を含む全世界の環境紛争の最大規模のオンラインデータベースである環境正義アトラス(Environmental Justice Atlas)において、2022年1月現在で入手できる全ての事例を調べた。著者らは、女性の環境保護者が関わる523事例を特定し、グローバルサウスの鉱業、アグリビジネス、労使紛争に集中していたことを示している。さらに、81事例では環境擁護を理由に女性が暗殺されたと指摘し、これは紛争の暴力が悪化した際の極端だがよくある結果であると示唆している。殺人が報告されている81事例の内、19事例がフィリピンで起こっており、ブラジル、コロンビア、メキシコでも多く起こっていた。殺人は、グローバルサウスにとどまらず、米国とヨーロッパでも暗殺が6件起こっていた。著者らは、各国の統治の説明責任やジェンダーの平等に関係なく、女性の環境保護者は高い割合で暴力の対象となっていたと示唆している。
著者らは、環境保護者に対する暴力を追跡したデータがジェンダーで分けられることはまれであるため、男性の環境保護者と同じくらい多くの女性の環境保護者が殺害されている可能性があると指摘している。そして、女性に対する暴力がどのようにして起こるか調べ、先住民の女性の環境保護者などのさまざまな女性の集団に対する暴力のパターンを特定するには、より優れた情報管理とさらなる分析が必要であると結論付けている。
doi:10.1038/s41893-023-01126-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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