生物工学:雌ネコのための非外科的避妊法
Nature Communications
2023年6月7日
雌のイエネコへの1回の注射で避妊効果が得られたことを示した論文が、Nature Communicationsに掲載される。この注射による遺伝子治療は、繁殖のために誘導される排卵を停止させるため、現在の標準的な避妊手術よりも侵襲性の低い個体群制御戦略となるかもしれない。
世界には、推定6億匹のイエネコが存在し、その80%が野良ネコだ。こうした野良ネコの福祉状態は一般的に劣悪で、野良ネコが野生動物を捕食することが多いことも知られている。一方、収容定数オーバーの動物保護施設で健康なネコを安楽死させることが、倫理的問題を引き起こしている。現在のところ、飼いネコの個体数制御の主たる方法は避妊手術だが、これに代わる効率的で安全で費用対効果の高い永久的避妊法が必要とされている。
今回、David Pépin、William Swansonらは、性的に成熟した雌ネコ9匹において、この遺伝子治療の概念実証研究を行った。注射による遺伝子治療を受けた6匹のネコに避妊効果が認められ、対照群の3匹のネコには避妊効果が認められなかった。この注射は、最近の研究でマウスの卵胞の成熟を抑制することが示された抗ミュラー管ホルモン導入遺伝子を、体内に送達した。注射を受けたネコには、注射から2年間、健康診断が実施されたが、有害反応(副作用)は観察されなかった。
この遺伝子治療については、安全性、効率性、有効性を確認するためのさらなる検査が必要となるが、雌のイエネコ(飼いネコと野良ネコ)の永久的避妊を誘導するための選択肢として、迅速かつ簡便に適用できるものとなる可能性がある。
doi:10.1038/s41467-023-38721-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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