考古学:東南アジアの現生人類に関する初期の証拠
Nature Communications
2023年6月14日
ラオス北部のタムパリン洞窟で人類の化石が新たに発見され、これによって、現生人類が8万6000~6万8000年前に東南アジアに移住した可能性が示唆されたと報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、東南アジア本土のホモ・サピエンスに関する既知の証拠として最古のものとなり、現生人類が東アジア、そして最終的にはオーストラリアに拡散した時期と経路に関する我々の知識を充実させる。
これまでに発表されたゲノムデータから、ホモ・サピエンスがアフリカからオーストラレーシアに拡散したのは、一度ではなかったという可能性が示唆されている。東南アジアで出土した化石証拠は少ないが、インドネシア、ラオス、オーストラリアで見つかった証拠(7万3000~4万6000年前と年代測定された)と合わせると、ホモ・サピエンスの拡散の順序には複雑な点があったことが示されており、その解明は進んでいない。
今回、Fabrice Demeterらは、タムパリン洞窟で新たに発見された化石について記述し、この洞窟で発見された化石の年代順について、以前に発表された内容を更新し、新たな知見も加えている。Demeterらは、この洞窟で出土した頭蓋骨の断片と脛骨について、放射年代測定を実施して、これらの骨を8万6000~6万8000年前のものと推定した。この頭蓋骨は、予想よりもはるかに細長く、あるいは繊細で、この年代よりもっと最近のアジアのホモ・サピエンスの頭蓋骨の形態に似ていることが分かった。Demeterらは、このことは、この頭蓋骨の持ち主が、もっとロバストな特徴を持つ地元のヒト集団ではなく、この地域に拡散したヒト集団の子孫であることを示している可能性があると考えている。
これらの化石の年代順と形態は、ホモ・サピエンスのオーストラレーシアへの拡散が一度は失敗していたことを支持している可能性がある。さらに、この知見は、この時代のヒトの拡散が複雑だったことを裏付けており、ラオス北部におけるヒト族の多様性の理解が深まった。
doi:10.1038/s41467-023-38715-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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