獣医学:気温の上昇や大気汚染の悪化によってイヌに噛まれやすくなる
Scientific Reports
2023年6月16日
気温の上昇、晴れ渡ること(紫外線量の増加)、大気汚染の増加によって、イヌに噛まれる頻度が最大11%高くなる可能性があることを示した論文が、Scientific Reportsに掲載される。ただし、著者らは、今後のデータの蓄積とさらなる研究によって今回の結果を裏付ける必要があると注意を促している。
これまでの研究で、気温の上昇と大気汚染の増加は、ヒト、アカゲザル、ラット、マウスの攻撃性の増加に関連していることが発表された。しかし、この傾向が、ヒトに対するイヌの攻撃性にも当てはまるかは明らかでない。
今回、Clas Linnmanらは、2009~2018年に米国の8都市(ダラス、ヒューストン、ボルチモア、バトンルージュ、シカゴ、ルイビル、ロサンゼルス、ニューヨーク市)で発生したイヌによる咬傷のデータを調べた。このデータは、動物管理当局が咬傷データを登録した一般公開レポジトリから得たものや、イヌによる咬傷のデータ集に基づいたものが含まれている。イヌによる咬傷の報告件数は、合計6万9525件で、上記の10年間に1日平均3件の咬傷が報告されていた。Linnmanらは、イヌによる咬傷事故の発生率と1日の微小粒子状物質(PM2.5)の濃度、オゾン濃度、気温、紫外線量、降水量との関連性を調べた。
この論文では、イヌによる咬傷事故の発生率が、紫外線量が増加した場合に11%、気温上昇の場合に4%、オゾン濃度上昇の場合に3%上昇したと報告されている。これとは対照的に、降水量の増加の場合はわずかに低下(1%)し、PM2.5濃度上昇の場合は変化がなかった。
Linnmanらは、こうしたイヌによる咬傷の記録には、個々のイヌの咬傷事故リスクに影響を与える他の要因(犬種、性別、去勢・避妊手術の有無など)に関する情報が含まれていない点に注意を要すると述べている。また、イヌによる咬傷事故の被害者と加害犬との事故発生前の交流内容(例えば被害者が加害犬に慣れていたか)に関する情報は得られなかった。
Linnmanらは、今回の知見によって、動物の攻撃性が気温の上昇と大気汚染の増加に関連しているという説がイヌにも当てはまると考えられると結論付けている。ただし、この関係が正しいことを裏付けて、さらに探索を進めるためには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/s41598-023-35115-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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