健康:死亡のリスク上昇と関連する社会的孤立と孤独感
Nature Human Behaviour
2023年6月20日
200万人以上を対象とした90件の研究についてレビューを行ったところ、社会的孤立と孤独感が全死因死亡のリスクの上昇と関連していることが明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。今回の知見は、社会的孤立と孤独感を軽減することが、健康と幸福を改善するのに役立つ可能性があることを示唆している。
社会的孤立とは、他者との社会的な接触を客観的に欠いている(または限られている)状況を意味し、限定的な社会的ネットワーク、すなわち低頻度の社会的接触を特徴とする。また孤独感とは、望ましい社会的関係と現実の社会的関係の食い違いから生じる苦痛という主観的な感覚を意味する。これまでの研究によれば、社会的孤立は、栄養不良や運動不足といった不健康な行動を高める可能性があることが示唆されており、免疫機能の低下と関連付けられてきた。また孤独感は、睡眠障害や免疫機能障害と関連付けられてきた。これまでの研究では、社会的孤立と孤独感が死亡のリスク要因であるかどうかが検討されてきたが、結果は一致していない。
Maoqing Wang、Yashuang Zhaoらは、1986~2022年に発表された90件の前向きコホート研究(長期にわたって追跡したコホートの計220万5199人が対象)のシステマティックレビューとメタ解析を行った。90件の研究のうち、29件は米国において、残りの61件は英国、日本、フィンランドなどの国で実施されたものであり、参加者は全て18歳以上で、70%は50歳以上であった。著者らは、社会的孤立も孤独感も、全死因死亡とがんによる死亡のリスクの上昇と有意に関連していること、また社会的孤立は心血管疾患による死亡のリスク上昇と関連していることを見いだした。
著者らは、対象となった90件の研究の方法(社会的孤立と孤独感の測定方法が異なっており、大半は高所得国で実施されている、など)のために、今回の結果が限定的なものであると述べている。著者らは、今回の知見を踏まえて、社会的孤立と孤独感の問題に取り組むための戦略と介入を呼び掛けている。
doi:10.1038/s41562-023-01617-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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