生態学:人間は脊椎動物種全体の約3分の1を使用または取引している
Communications Biology
2023年6月30日
人間は、全脊椎動物種の約3分の1を使用または取引しており、そうした脊椎動物種の39%が、このような使用や取引によって危機的状況にあることが明らかになった。このことを報告する論文が、Communications Biologyに掲載される。この知見は、人間活動によって影響を受けている野生動物個体群の大規模なネットワークが世界に存在することを明確に示している。
今回、Chris Darimont、Rob Cookeらは、2019年に収集した国際自然保護連合(IUCN)の脊椎動物種(4万7665種)の使用と取引に関するデータを解析した。今回の研究では、人間による使用または取引(野生個体群からの個体の除去を伴う)の対象となった脊椎動物の種数が算出された。使用または取引には、狩猟、食料、衣料、医薬品、ペット取引での使用などが含まれている。次に、種の絶滅リスクが記録されているIUCNのレッドリストに基づいて、人間による使用によって危機的状況にあるとされる脊椎動物種が特定され、その割合が算出された。そして、人間以外の捕食種が生息域内で捕食する脊椎動物の種数と、それと同程度の広さの地理的地域内で人間が使用または取引する脊椎動物の種数の比較が行われた。
その結果、人間が使用または取引している脊椎動物は1万4663種(全脊椎動物種の約3分の1に相当)で、そのうちの39%(5775種)が、人間に使用されることで危機的状況にあると示唆された。1万4663種のうち55%は食用に使用されており、マグロなどの海洋生息種の場合、食用が最も一般的な用途だった。また、人間が使用または取引している陸生種(4489種の鳥類を含む)の半分以上は、ペット取引に使用されていた。レクリエーション目的の狩猟は、条鰭類魚類(358種)と鳥類(452種)に影響を及ぼし、哺乳類(207種)と軟骨魚類(33種)が衣料の製造に使用され、爬虫類(106種)、哺乳類(192種)、両生類(82種)が医薬品に用いられていた。
著者らは、人間が使用または取引している脊椎動物の種数が、同じサイズの地域内で人間以外の捕食種が捕食する脊椎動物の種数の最大300倍に達しており、人間が、ジャガーの300倍、ライオンの80倍、ホオジロザメの113倍の種数の脊椎動物を使用していることを報告している。これは、人間の影響を受けている脊椎動物種が多岐にわたることを示している。著者らは、人間活動が捕食種の食料源の利用可能性に影響を及ぼす可能性があるという見解も示している。メバチマグロとジャガーが捕食する脊椎動物種のそれぞれ30%と100%は、人間によっても使用または取引されている。
著者らは、人間が使用や取引の対象としている脊椎動物種の全てが、人間に使用されて危機的状況に陥っているということではないが、多種多様な脊椎動物種の乱獲が長期化すると、脊椎動物の多様性の低下につながり、生態系の機能にもっと幅広い影響が生じるかもしれないと結論付けている。
doi:10.1038/s42003-023-04940-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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