パーキンソン病:動作追跡データを使ってパーキンソン病を見つけ出す
Nature Medicine
2023年7月4日
受動的に集められた動作追跡データから、パーキンソン病を将来発症することを示す初期の手掛かりが得られる可能性が出てきた。このようなデータを使えば、大規模集団のスクリーニングを比較的低コストで、しかも非侵襲的に行えると考えられる。しかし、さらなる研究は必要である。
パーキンソン病はまだ治療法の見つかっていない神経変性疾患で、運動機能に関わるニューロンが次第に失われていく。診断が可能になるのは、普通は神経変性が数年間進んでからで、その時点までに運動機能に関わるニューロンの約50〜70%が病気に冒されている。パーキンソン病の発症リスクのある被験者がこのような検査で見つかれば、この病気を防御する薬剤の開発を目的とする臨床試験へ参加させることができるかもしれない。
C Sandorらは、40〜69歳の成人10万3000人以上から集められた英国バイオバンクのデータを用いて、動作追跡装置によって得られたデータがパーキンソン病の症例を臨床診断前に見つけるのに使えるかどうかを調べた。そして、生活様式、遺伝学的検査、血液生化学検査、患者自身による症状の報告といった広く使われている臨床的指標よりも、動作追跡装置から得られたデータを使って訓練した機械学習モデルの方が、臨床診断されたパーキンソン病や診断前のパーキンソン病をうまく見つけ出せることが明らかになった。Sandorらは、運動の加速度に関係した独特なパターンと睡眠の質が将来のパーキンソン病発症や既に診断されたパーキンソン病に関連付けられることに注目している。日中の平均加速度はパーキンソン病診断の数年前から低下しており、また睡眠障害は神経変性疾患や運動障害などの他の臨床疾患の患者に比べて、パーキンソン病と診断された患者の方が深刻だった。
Sandorらは、これらの知見は動作追跡データがパーキンソン病のリスクのある個人を見つけ出すための低コストのスクリーニング法となる可能性を示していると考えているが、この結果を再現するには他のコホートでのさらなる研究が必要だと付け加えている。Sandorらは、パーキンソン病に関連した病的な神経変性の兆候を早い段階でスクリーニングできれば、神経を保護する治療を開始できるし、そういった治療法の開発に向けた臨床試験を行うことも可能になるだろうと述べている。
doi:10.1038/s41591-023-02440-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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