気候変動:気候変動の結果の予測に金を賭けると気候変動に対する懸念が強まる
Nature Climate Change
2023年6月9日
気候変動に関連して発生し得る事象を対象とした賭けをすると、この賭けの参加者は、気候変動に対する懸念を強め、気候変動についての理解を深めることが示唆された。なお、この結果は、参加者がそれまでに気候変動をどう思っていたかとは無関係だった。このことを報告する論文が、Nature Climate Changeに掲載される。
気候変動についての信念は、政治的影響を受けやすく、二極化している。この信念を変えることが難しいのは周知の通りで、情報による論拠や価値観に基づいた論拠を用いる戦略で対応しようとしても、相手の意見はなかなか変わらない。その理由にはいくつかあって、気候変動の複雑な性質に加えて、気候変動の影響が広大な範囲に及び、長期間にわたることが挙げられる。そのため、人々が気候変動の発生を無視したり拒否したりしても、それによって直ちに負担するコストは極めて小さい。
今回、Moran Cerfらは、米国の参加者を対象として、予測市場(賭博市場)を用いた研究を実施し、気候変動に関する誤った信念に関連した短期的コストの増加を経験した場合に、参加者の気候変動に対する態度が影響を受けるかどうかを検証した。予測市場は、不確実な将来の出来事に関する推測情報をクラウドソーシングするために用いられるツールだ。Cerfらは、143人が参加した小規模な第1回試験と、664人が参加した大規模な第2回試験の合計2回の試験を実施した。いずれの試験においても、試験の前後に質問調査が実施され、その結果は、予測市場に参加しなかった対照群の質問調査の結果と比較された。それぞれの試験では、参加者に、将来の気候事象の予測(例えば、今後1カ月間の北半球の平均気温が過去10年間の同一期間の平均気温よりも高く「なる」あるいは「ならない」)に金銭を賭けさせた。正しい予測に賭けた参加者は金銭的な報酬を受け取り、誤った予測に賭けた参加者には罰金を課した。その結果、Cerfらは、この予測市場の参加者が、気候変動に対する懸念を強め、気候変動対策を支持する姿勢が強固になり、気候問題に関する知識も増えたことを見いだした。また、Cerfらは、この検証で判明した予測市場の効果は小さなものだったが、それまでの信念や政治的イデオロギーの影響を受けなかったと述べている。
Cerfらは、人々の気候変動に関する態度や行動を変えることは、今後の気候変動緩和にとって非常に重要であり、今回の知見が、この変化をもたらす有効な機構を示している可能性があるという見解を示している。
doi:10.1038/s41558-023-01679-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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