環境:森林の分断化は一般的には減少傾向だが熱帯では増加している
Nature Communications
2023年7月12日
森林の分断化は、熱帯(特にアマゾン川流域南部、コンゴ盆地、東南アジア本土)で進んでいる一方で、その他の多くの地域では減少傾向にあるという研究結果を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、特に熱帯地域で森林破壊を減らし、分断化された森林の連続性を高める必要性を強く示している。
森林景観の分断化は、生態系の劣化を駆動する大きな要因であり、大規模な森林減少の前兆であることが多い。人工衛星の観測データを用いて作製された森林被覆マップの利用機会が増えているが、森林の分断化を全球規模で定量化することは難しい課題になっている。分断化された森林の分布とサイズのマップを特定の時点について作製しても、分断化過程の時間的推移を定量化したことにならないのは重要な問題だ。
今回、Jun Ma、Jiawei Liらは、分断化された森林の分布とその経時変化を同時に定量化するための動的指標を開発した。今回の研究では、以前に別の研究者が作製した2000年と2020年の高解像度森林被覆マップに、この動的指標が適用された。その結果、2000年から2020年までに世界の森林景観の75.1%で分断化が減少したが、熱帯地域では分断化が増加したことが判明した。人口密度が高く、経済的に発展した地域(米国東部、ヨーロッパ、中国南部)では、森林の分断化が大きく減少していた。また、熱帯と亜寒帯における森林の分断化の程度は、温帯の森林ほど大きくなかった。しかし、熱帯地域では、森林の分断化が大きく進み、森林被覆率も低下しており、熱帯の森林が人間から極度の圧力を受けていることが示唆されている。
著者らは、熱帯における森林減少を食い止めるための取り組みを強化する必要があると指摘し、上述した傾向が続けば、熱帯における森林の分断化はさらに悪化し、気候に関する国際合意や生物多様性の保全が深刻な影響を受けることになるという見解を示している。
doi:10.1038/s41467-023-39221-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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