惑星科学:火星探査車パーサビアランスがジェゼロ・クレーターで多様な有機物を発見
Nature
2023年7月13日
火星のジェゼロ・クレーターで、火星探査車パーサビアランスによってさまざまな種類の有機分子の証拠が検出されたことを発表する論文が、Natureに掲載される。この知見は、過去の火星における大気圏、岩石圏、水圏の間の物質循環が、これまで考えられていたよりも複雑なものだった可能性を示唆している。
火星上の有機物の起源を説明する仮説としては、水と岩石の相互作用、惑星間塵や流星による堆積物などがあるが、生物を起源とする説も排除されていない。火星上の有機物についての理解が深まれば、炭素源の利用可能性に関する手掛かりが得られるかもしれない。これは、生命の痕跡の探索にとって重要な意味を持っている。
SHERLOC(Scanning Habitable Environments with Raman and Luminescence for Organics and Chemicals)は、蛍光分光法とラマン分光法を組み合わせた装置で、火星上の有機分子と鉱物の精密なマッピングと分析を可能にした初めてのツールだ。SHERLOCは、ジェゼロ・クレーター内に着陸した探査車パーサビアランスに搭載されている。ジェゼロ・クレーターは、火星の古代の湖水盆地の跡で、かつて生命が存在していた可能性が高いとされる。今回、Sunanda Sharma、Ryan Roppelらは、ジェゼロ・クレーターの底にある2つの地層(MáazとSéítah)におけるSHERLOCの観測結果を分析した。ジェゼロ・クレーターの底におけるSHERLOCの観測標的(10カ所)全てで有機物のシグナルが検出され、その密度はSéítahよりMáazの方が高かった。これは、有機物の空間分布および鉱物との会合の多様性を示しており、それらは地層に特有のものかもしれない。この観測結果に見られる多様性は、有機物が出現する過程の多様性(水による堆積、火山物質による合成など)に関する手掛かりとなる可能性がある。
今回の知見は、火星の表面で、異なる有機物合成・保存機構が働いている可能性を示している。著者らは、これらの機構に水過程が重要な役割を果たした可能性を指摘している。
doi:10.1038/s41586-023-06143-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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