気候:暑くなる世界における冷房の必要性の高まりは国によって異なる
Nature Sustainability
2023年7月14日
全球平均気温が産業革命以前のレベルより1.5℃を超えて2℃高くなれば、スイス、英国、ノルウェーでは冷房の必要性の相対的増加が急激で最も大きくなることが、モデル化研究によって明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Sustainabilityに掲載される。この知見は、冷房需要の増加がサハラ以南の国々において最大になることも示唆している。
パリ協定は、全球平均気温の上昇を1.5℃に抑えることを目指している。気温の上昇によって、冷房の需要が既に増えてきており、2050年までに冷房に必要なエネルギーが、国際エネルギー機関(IEA)によって報告されている2016年の米国、EU、日本を合わせた発電容量と同等になると推定されている。
今回Jesus Lizana、Nicole Mirandaらは、全球大気大循環モデルと2006~2016年の過去の気候データに基づいて、1.5℃の限界を超えて温暖化が2℃に上昇した場合の、冷房度日(CDD)の年変化を見積もった。CDDでは、地域の屋外平均気温と標準的な基準気温(今回の場合18℃)を比較して、気温曝露と冷房需要が決定される。その結果、より温暖なサハラ以南の国々(中央アフリカ共和国、ブルキナファソ、マリ、南スーダン、ナイジェリアなど)の冷房需要の増加が最も大きくなると思われることが明らかになった。また、グローバルノースのより寒冷な国々(スイス、英国、スカンジナビア諸国、オーストリア、カナダ、デンマーク、ニュージーランド、ベルギーなど)では、冷房を必要とする日数の相対的増加が最大になると思われる。
著者らは、こうした気温の上昇がさまざまな国々で起こる時期と、湿度などの他のパラメーターの変化が果たす役割については、まだ不確かさがあると指摘している。しかし、今回の結果は、気温の小さな変化であっても、暑さへの曝露と冷房需要に影響を及ぼし、適応の必要性が高まることを示していると結論付けている。
doi:10.1038/s41893-023-01155-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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