古生物学:古代アジアのアリゲーターの新種とされる頭蓋骨化石
Scientific Reports
2023年7月14日
タイで出土した動物の頭蓋骨の化石を調べた研究で、この動物が古代のアリゲーターの新種であり、ヨウスコウアリゲーター(Alligator sinensis)と近縁な関係にあったという結論が示された。このことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。
今回、Gustavo Darlim、Márton Rabi、Kantapon Suraprasit、Pannipa Tianらは、タイのBan Si Liamでほぼ完全な形で発見された頭蓋骨化石が、23万年前より新しい化石であり、アリゲーターの新種であることを明らかにした。この新種は、化石が発見された地点の近くを流れるムン川にちなんでAlligator munensisと名付けられた。著者らは、この遺骸化石をさらに調べて、アリゲーターの絶滅種(4種)の標本(19点)と現生種であるアメリカアリゲーター(Alligator mississippiensis)、ヨウスコウアリゲーター、メガネカイマン(Caiman crocodilus)との比較を行い、A. munensisと他種の進化的関係を探った。著者らはまた、アリゲーター種の骨格の特徴とアリゲーター種間の進化的関係に関する過去の論文も検討した。
今回の論文には、A. munensisに特有の頭蓋骨の特徴として、幅広く短い口吻、高さのある頭蓋骨、歯槽の数が少ないこと、鼻孔が口吻の先端から離れた位置にあることなどが示されている。これに加えて、A. munensisとヨウスコウアリゲーターの頭蓋骨の類似点として、口蓋に小さな開口部があること、頭蓋骨の上部に隆起があること、鼻孔の背後に隆起部があることなどが指摘されている。著者らは、A. munensisとヨウスコウアリゲーターは近縁な関係にあり、それらの共通祖先が、長江-西江水系とメコン川-チャオプラヤ川水系の低地に生息していた可能性があるとする考えを示している。著者らは、2300万~500万年前に起こったチベット高原南東部の隆起が、複数の集団の分離と2つの種の独自の進化につながったのではないかと推測している。
著者らは、A. munensisの口には、奥に向かって複数の大きな歯槽があり、殻を噛み砕くことができる大きな歯があったかもしれないと述べており、こうしたことから、A. munensisは、他の動物に加えて、硬い殻を持つ獲物(巻貝など)を食べていた可能性があるという見解を示している。
今回の知見は、アジアのアリゲーターの進化を解明するためのさらなる手掛かりとなる。
doi:10.1038/s41598-023-36559-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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