進化学:古代のイルカが沿岸海域に迅速適応していたことがゲノム解析で判明
Nature Communications
2023年7月19日
新たに発見された古代のイルカのDNAを解析した結果、その当時の新しい沿岸環境への平行適応が迅速に起こっていたことが明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の知見は、過去9000年間にイルカがさまざまな生息地にどのように適応したかを把握するために役立つ。
異なる生物集団が、同じ環境圧力に同じように適応することを平行適応という。バンドウイルカの生理、採餌戦略と行動は、環境条件(塩分濃度、水深、被食種など)の異なる沿岸生息地の出現によって影響を受けた可能性がある。バンドウイルカは、世界中の外洋と沿岸の両方の生息地に適応しており、外洋型バンドウイルカの複数の集団が沿岸生息域に適応した際に平行適応が役立ったことを示唆する遺伝的証拠が存在する。しかし、こうした適応が、古代のイルカにおいて、いつ、どれだけ迅速に起こったかは分かっていない。
今回、Marie Louisらは、北海で採集されたイルカの骨の半化石(4点)から古代DNAを抽出し、解析した。これらの骨は、放射性炭素年代測定の結果、8610~5626年前のものと判定された。この時期には、北ヨーロッパ海域で新しい沿岸生息地が出現していた。Louisらは、古代のイルカが新しい沿岸生息地に迅速に適応したことを示した。また、沿岸生息地への適応に関連した遺伝的変化が、現代の外洋型バンドウイルカのDNAに残っており、それが、沿岸生息地への適応を迅速化する上で役立ったことを明らかにした。
以上の知見は、過去の進化の動態を突き止めることで、バンドウイルカのように十分に研究されている現生動物種についても適応を解明できることを示している。
doi:10.1038/s41467-023-39532-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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