古生物学:恐竜を捕食していた白亜紀の小型哺乳類
Scientific Reports
2023年7月19日
中国で発見された珍しい化石の研究が行われ、白亜紀に生息していた小型哺乳類が、自分の体よりかなり大きな恐竜を捕食していた可能性のあることが示唆された。この化石は、レペノマムス・ロブストゥス(Repenomamus robustus)という小型哺乳類が、くちばしを持つ二足歩行恐竜のプシッタコサウルス(Psittacosaurus lujiatunensis)を攻撃している状態を保存したものと考えられている。このことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。今回の知見は、一部の恐竜種にとって哺乳類が脅威であった可能性を示唆しており、哺乳類は、自分より大きな恐竜に捕食されるだけだったとする仮説に疑問を投げ掛けている。
今回、Jordan Mallonらが報告した化石は、下部白亜紀層である中国の義県累層の陸家屯(Lujiatun)部層で2012年5月に発見されたもので、古代の哺乳類動物R. robustusと恐竜P. lujiatunensisの激しい一騎打ちが化石化されている。この化石標本は、約1億2500万年前と年代決定された。R. robustusの標本は、長さ46.7センチメートルで、尾の先端を除いてほぼ完全な形で残っている。P. lujiatunensisの全身骨格は長さ119.6センチメートルだ。いずれも死亡時には亜成体であったと考えられている。
化石化した恐竜は、腹ばいになっており、後肢は体の左右で屈曲した状態で、頚部と尾部は、左方向に曲がっている。哺乳類動物は、恐竜の体の左側に覆い重なった状態で横たわり、体は右方向に曲がっている。哺乳類動物の左手は、恐竜の下顎を掴んでおり、その下顎は、前方に少しずれている。哺乳類動物の左後肢は、恐竜の屈曲した左後肢の下にはさまれており、哺乳類動物の足先は、恐竜の左後肢の脛をつかんでいる。哺乳類動物の歯は、死亡時に恐竜の胸郭に食い込んでいた。
この化石について、Mallonらは、哺乳類動物が恐竜を捕食しようと攻撃していた時に火山泥流に巻き込まれて埋没してしまったという仮説を立てている。また、両者の絡み合いの程度と恐竜の骨格に他の噛み跡がないことは、哺乳類動物が恐竜の死骸をあさって食べていたのではないことを示している。
Mallonらは、この化石が見つかった地域の古代の火山活動の規模を考慮すると、陸家屯部層が化石を産出する重要な地層となり、今後も白亜紀の生態系に関する知見をもたらす可能性があると予想している。
doi:10.1038/s41598-023-37545-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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