感染症:SARS-CoV-2の無症候性感染の遺伝的基盤
Nature
2023年7月20日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の無症候性感染に関連する遺伝的バリアントが特定されたことを報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この知見は、SARS-CoV-2に感染しても症状が現れない人がいる理由を説明する上で役立つ可能性がある。
SARS-CoV-2感染者の少なくとも20%は無症状であることが、研究によって示されている。SARS-CoV-2の無症候性感染の研究は、ウイルスの迅速な排除を促進する免疫系の特徴に関する我々の理解を進める可能性がある。ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子は、免疫応答に関与するタンパク質をコードしており、ウイルス感染に対する応答に関与していると考えられている。
今回、Jill Hollenbachらは、HLA遺伝子の変異を保有する人々の一部がSARS-CoV-2の無症候性感染を起こしやすいかどうかを調べた。今回の研究は、スマートフォンを使って新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状と転帰を追跡するもので、2万9947人が参加した。SARS-CoV-2の感染検査で陽性判定されたワクチン未接種者のコホート(合計1428人)では、136人が無症状と報告した。また、感染後も無症状だった人の5人に1人が、HLA遺伝子の高頻度バリアントの1つであるHLA-B*15:01を保有していることが判明した。このバリアントを2コピー保有している人は、これ以外のHLA遺伝子のバリアントを保有している人と比べて、無症状のままでいる確率が8倍以上高かった。
この研究では、過去にSARS-CoV-2に曝露されていないHLA-B*15:01保有者が、他の季節性コロナウイルスとの配列類似性が高いSARS-CoV-2のタンパク質断片に反応性を示すT細胞(免疫細胞の一種)を保有することも判明した。この知見は、過去に季節性コロナウイルスに曝露されたことのあるHLA-B*15:01保有者は、SARS-CoV-2に対する既存の免疫を有しており、症状が現れる前にウイルスを迅速に排除できる可能性があることを示している。
doi:10.1038/s41586-023-06331-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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