天文学:ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が遠方銀河で炭素質の塵を検出した
Nature
2023年7月20日
誕生から10億年未満の銀河に炭素質の塵が存在することを示唆するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測結果を報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この塵には水素やヘリウムより重い元素が含まれており、この特徴は、天の川銀河(誕生後130億年超)のような古い銀河に限られたものだと考えられている。この知見は、宇宙塵の形成に関する既存の理論に疑問を投げ掛ける可能性がある。
星間塵は、死を迎えつつある星から生成されるため、銀河進化のマーカーと考えられている。初期宇宙では、炭素のような重い元素は少なかったと考えられている。これとは対照的に、天の川銀河のような古い銀河には、炭素質の塵粒子(例えば、芳香族炭化水素)が含まれていると考えられている。これは、特定の紫外線周波数の光の吸収による「へこみ」の観測に基づいている。
今回、Joris Witstokらは、JWSTに搭載された機器を使って、複数のはるかに若い銀河が発する紫外線の吸収による同様の「へこみ」を観測した。これらの銀河には、ビッグバンから約10億年後の時代の銀河が含まれており、この観測結果は、炭素を含む塵の存在を示唆している。以上の知見は、より重い元素はそれほど速く形成されないという、塵の形成に関する現在の学説と矛盾している。Witstokらは、初期銀河における炭素質粒子の形成が比較的短い時間スケールで起こることが示唆されたことは、炭素質粒子が急速に形成する過程が存在することを意味すると考えている。例えば、高速で膨張する星(ウォルフ・ライエ星)や超新星からの放出物質がある。
doi:10.1038/s41586-023-06413-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
生物学:全ヒト細胞アトラスの作成Nature
-
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
健康科学:イカに着想を得た針を使わない薬物送達システムNature
-
化学:光を使って永遠の化学物質を分解する新しい方法Nature
-
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications