地球科学:地球上に生命が誕生する前のメタン生成の研究
Nature Communications
2023年8月2日
初期地球でのメタン生成が、これまで考えられていたよりも容易に広範囲で起こっていたという可能性を示した論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の知見は、暖かさと光によって駆動される反応が、地球全体の水中周囲環境におけるメタン生成をもたらし、高圧や高温は必要なかった可能性を示唆している。こうした反応は、地球上に生命が出現する以前の大気の化学的進化を形作った可能性がある。
メタンは、強力な温室効果ガスであり、初期地球を温暖に保ち、若い太陽のエネルギー出力が不十分だった頃に液体の海洋を維持して、始生代(40億~25億年前)の生命の進化を可能にした可能性が高い。しかし、地球上に生命が誕生する以前のメタンの発生源については、いまだに議論が続いている。これまでの研究では、メタンの生成は、熱水噴出孔周辺の地殻内の高温高圧域だけで起こっていたと考えられていた。
今回、Leonard Ernstらは、生物の存在しない初期地球の状態に似せて設計したモデルシステムを使って実験を行った。その結果、30℃という低い温度で、活性鉄とメチル化硫黄化合物を含む中性pH溶液から、活性酸素種(例えば、過酸化水素)の作用によってメタンが生成されることが判明した。これらの成分は、全て初期地球の水中環境中に豊富に含まれていたと考えられている。活性酸素種は、浅瀬では光によって生成され、水柱全体では熱によって生成されていた。
Ernstらは、初期地球で生成されたメタンの量が、この水中環境でのメタン生成過程によって大幅に増加した可能性があると考えている。
doi:10.1038/s41467-023-39917-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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