考古学:中国で発掘された最古の陶製排水システム
Nature Water
2023年8月15日
中国の中央平原に位置する平糧台(Pingliangtai)の城壁遺跡で、陶製排水管を用いた排水システムが発掘された。これは、約4000年前に構築された中国で最古の排水システムで、環境危機に適応するための初期の社会・環境操作であった可能性があり、社会による集団的水管理の初期事例とされる。今回の研究について報告する論文が、Nature Waterに掲載される。
平糧台の遺跡は、後期新石器時代の遺跡であり、この地域は、温帯モンスーン気候で、気温と降水量が劇的に変化し、夏の月間降水量は500ミリメートルを超えることもある。平糧台の集落は、氾濫原に位置していたため、住民は水に不自由しなかったが、不安定な気候による脅威に直面していたと考えられる。以前にアジア全域の集落や都市の遺跡を調べる研究が行われ、水関連インフラの整備と社会階層の形成との関連性が示唆された。しかし、水管理は、さまざまな過程を経て発達した可能性があり、必ずしも階層的な権力構造の下で発達したわけではなく、十分に解明されていない。
Hai Zhang、Yijie Zhuangらは、平糧台が位置する淮陽県で採取した堆積物コア(147点)を分析し、約4200年前に降水量の短期変動(極端な降雨現象を含む)があったことを示す証拠を発見した。今回の研究では、平糧台で大規模な発掘調査も実施され、当時の住民(460~600人)がどのように洪水に適応したのかを調べた。著者らは、平糧台の地域社会で、排水管と排水溝を併用した排水システムが運用、維持されていたという見解を示している。この発掘調査で、4100~3900年前のものとされる陶製排水管が発見されると同時に、家屋の基礎に並行して敷設され、排水を別の共同排水区域へ流し込むための排水溝システムが見つかった。そのいずれも複数回の修繕と再建が行われたと考えられている。家屋を取り巻くように敷設された排水溝は、主に世帯単位で建設、維持されていたと考えられるが、公共空間に敷設された陶製排水管や排水溝は、計画と調整が必要だったと考えられる。平糧台は、社会階層が形成された地域社会ではなかったと考えられているため、著者らは、平糧台での水関連インフラの管理は、協調的な水のガバナンスの存在を示していると考えている。
doi:10.1038/s44221-023-00114-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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