古生物学:ひげを使って餌を見つけていた可能性が高いアザラシの古代の近縁種
Communications Biology
2023年8月18日
現生のアザラシの近縁種で、今から2300万年以上前に生息していたポタモテリウム(Potamotherium valletoni)は、カワウソのような外見をしており、ひげを使って餌を探したり、水中環境を探索したりしていた可能性が高いことを示した論文が、Communications Biologyに掲載される。この知見は、古代のアザラシが陸上生活から水中生活に移行した過程に関する新たな手掛かりとなる。
現生のアザラシは、海洋環境に生息し、ひげを使って水中の振動を感知して餌を探しているが、古代の近縁種の大部分は、陸上環境か淡水環境に生息し、その一部は、前肢を使って周囲を探索していた。アザラシとその近縁種がひげを使って餌を探すようになった時期については、今回の研究まで分かっていなかった。
今回、Alexandra van der Geerらは、ポタモテリウムの脳構造をイタチ科動物、クマ、アザラシの近縁種など食肉哺乳類の絶滅種6種と現生種31種と比較して、アザラシのひげ採餌行動の進化を調べた。それぞれの脳構造は、頭蓋骨の内部の鋳型を基に推定された。van der Geerらは、冠状回という脳領域のサイズと構造を比較した。冠状回は、ひげからの信号の処理に関与していることがこれまでの研究で示唆されている。その結果、ポタモテリウムの冠状回は、前肢を使って採餌する陸上哺乳類の古代種や現生種(コツメカワウソなど)の冠状回よりも大きかったが、ひげを使って周囲を探索するその他のアザラシの古代の近縁種や半水生哺乳類(ユーラシアカワウソなど)の冠状回とは同じようなサイズだったことが判明した。これは、ポタモテリウムがひげを使って採餌していた可能性を示しており、その際に前肢も併用していた可能性がある。
今回の知見は、アザラシの古代の近縁種が、完全な水生生活に移行する前からひげを使った採餌を行っていたことを示唆している。van der Geerらは、ひげを使うことが、水中での採餌に適応するために役立った可能性があるという考えを提示している。
doi:10.1038/s42003-023-05135-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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