気候変動:気候変動に脅かされているヨーロッパのスキー場
Nature Climate Change
2023年8月29日
ヨーロッパ28カ国のスキーリゾートの分析が行われ、その約半数は、産業革命前の水準を2℃上回る地球温暖化の下で、雪の供給が不足するリスクが非常に高いと予測されたことを報告する論文が、Nature Climate Changeに掲載される。この論文には、雪の供給量の減少に対処するための人工降雪の可能性と影響を検討した結果も示されている。
世界のスキーリゾートの約50%が、ヨーロッパに所在している。スキーリゾートは、確実かつ予測可能な積雪に依存しているため、気候変動に対して非常に脆弱である。スキーリゾートが気候変動に対処する方法の1つが、人工降雪に投資することであり、一部の地域では年間の一定期間に確実な雪の供給を必ず実現できる可能性がある。気候変動の影響と人工降雪の可能性の評価は、個別のスキーリゾートやヨーロッパ内の一部地域について行われているが、それより大きな規模で人工降雪の影響可能性を分析する研究は行われていなかった。
今回、Hugues Françoisらは、ヨーロッパ28カ国の2234のスキーリゾートを包括的に分析し、地球温暖化で平均気温が2℃上昇した場合と4℃上昇した場合の積雪の変化を評価した。その結果、53%(2℃上昇の場合)と98%(4℃上昇の場合)のスキーリゾートが、雪の供給が不足するリスクが非常に高くなると予測され、地域差が大きいことが示された。また、Françoisらは、人工降雪の可能性と影響を評価するために、人工降雪を使用するスキーリゾートの比率を変化させて、積雪と資源使用に及ぼす影響を定量化した。その結果、スキーリゾート全体の面積の50%で人工降雪を使用すると仮定した場合には、ある程度のリスクのあるスキーリゾートの比率は減るが、それでも27%(2℃上昇の場合)と71%(4℃上昇の場合)のスキーリゾートは依然として、深刻な雪不足の影響を受けることが明らかになった。Françoisらは、人工降雪技術を導入すると、人工降雪によって水需要と電力需要が増加するだけでなく、二酸化炭素排出量が増加するという見解を示している。
Françoisらは、こうした人工降雪に関する予測は、特に人工降雪による積雪と資源需要に関して、単純化された仮定に基づいているため、今回の知見を決定的なものと考えるべきではないと強調している。しかし、こうした知見は、スキー観光産業に対する気候変動の影響をよりよく説明する手段になっており、この業界の気候変動に対する適応(不適応の可能性を含む)と気候変動の緩和の関係を解明する手掛かりをもたらしている。
doi:10.1038/s41558-023-01759-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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