天文学:古い隕石がもたらす初期太陽系に関する新たな知見
Nature Communications
2023年8月30日
2020年にサハラ砂漠の一部であるシェシュ砂漠(アルジェリア)で発見された約46億年前の隕石「Erg Chech 002」の分析結果を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の分析結果とこれまでに発表されたデータを総合した結果、この隕石が形成された時、この隕石の中にアルミニウム-26(26Al)という放射性同位体が存在しており、26Alが我々の太陽系全体に不均一に分布していたという結論が導き出された。今回の知見によって、我々の初期太陽系に関する理解が深まり、非常に古い隕石の年代測定の精度を高められる可能性がある。
Erg Chech 002は、安山岩質のエイコンドライトで、これまで知られている中で最も古い石質隕石の一種である。26Alは、初期惑星の融解を引き起こした主要な熱源である。Erg Chech 002が非常に古いため、初期太陽系内の26Alの初期分布の研究を進めるチャンスが得られた。26Alが初期太陽系全体に均一に分布していたかという論点に決着をつけることは、隕石の年代を決定し、初期太陽系を理解する上で重要だが、議論が続いている。
今回、Evgenii Krestianinovらは、Erg Chech 002の分析を行い、その鉛同位体の年代を約45億6600万年前と決定した。次に、この知見と既存のErg Chech 002に関するデータを総合して、メルトから結晶化した他の非常に古い隕石と比較した。その結果、26Alが原始太陽系星雲内に不均一に分布していたことが示された。これは、合成されたばかりの放射性核種を含んだ星物質の後期落下に関連している可能性が高い。
Krestianinovらは、隕石の年代学研究は慎重になされるべきで、隕石と惑星物質の年代測定の精度と信頼性を高めるため、短寿命の同位体を用いた年代測定を行う際には、この同位体の不均一な分布を考慮に入れた手法を一般化して実践すべきだとする考えを示している。
doi:10.1038/s41467-023-40026-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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