生物多様性:絶滅の危機にある植物種にとっての楽園
Scientific Reports
2023年9月1日
ドイツで増えている植物の生物多様性減少の問題に対する取り組みに、環境保全型造園が役立つ可能性があることを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。環境保全型造園とは、都市部や農村部の緑地に、減少しつつある在来種を植栽することをいう。著者らは、ドイツ全体で平均すると、絶滅危惧種のレッドリストに掲載されている植物の41%(988種)が環境保全型造園に適しているという見解を示し、他の国々にも環境保全型造園を普及させて、生物多様性を高めることができるかもしれないと述べている。
緑地における植物の生物多様性の重要性に対する一般市民の認識は高まっているが、観賞植物のある整然とした庭園を好む傾向が依然として強い。庭園で栽培される植物については、地元の植物が含まれることもあるが、多様性のレベルが低いという傾向があり、植物種の選定は、入手可能性と個人的な経験に大きく影響される。
今回、Ingmar Staudeらは、ドイツ全16州の絶滅危惧種と危急種の植物に関する最新のレッドリストのデータを入手し、ここに野生絶滅種の植物のデータを加えた。環境保全型庭園が、これらの植物の新たな生育地となり得るためだ。次に、NaturaDBのデータベースに登録されたデータを照合し、これらの絶滅危惧種を分類して、造園に適した植物種のリストを作成した。そして、植物と種子の生産者のウェブサイトのデータを使って、リストアップされた植物種の市場での入手可能性を評価した。Staudeらは、このデータを基にして、この植物種のリストを造園業者や地元当局向けに提供するウェブアプリを作成し、環境保全型造園に適した植物を簡単に選べるようにした。
ドイツの州政府が発行するレッドリストに記載されている植物種数は、515~1123種で、環境保全型造園に適した植物種数の中央値は988種(41%)だった。ハンブルクでは絶滅危惧種の53%(670種中352種)が環境保全型庭園で栽培可能とされたが、バイエルンでは29%(1123種中321種)だけだった。また、環境保全型造園に適合すると判定された植物種全体の66%(650種)は、市場で購入可能だった。さらに、Staudeらの計算によれば、環境保全型造園に適した絶滅危惧種の植物の45%が乾燥土壌を好む植物だったのに対し、従来の園芸植物において乾燥土壌を好む植物が占める割合は27%だった。
今回の知見は、数多くの絶滅危惧種の植物が造園植物として適しており、市販されていることを示している。Staudeらは、絶滅危惧種の植物が、乾燥度の高い条件下でも一般的に耐性が高い可能性があるという見解を示している。以上の点を総合すると、今回の研究により、生物多様性の減少を食い止める新しい方法が示されたと言える。
doi:10.1038/s41598-023-39432-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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