環境:高温が、都市の土着野生生物の生存を困難にする
Nature Ecology & Evolution
2023年9月5日
土着の野生生物に対する都市化の悪影響が気候の変化で強まる可能性があることを報告する論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。その知見は、北米20都市の725地点を監視するカメラトラップのデータに基づいている。
都市的地域は、世界中で面積が拡大していて、人口も増加しており、野生生物種の分布と多様性に影響を与え得る。都市の特徴とそこに生息する動物の特徴との間には、複雑な相互作用がある。都市は面積や人口密度、土地被覆、開発年数、そして気候が多様であり、野生生物群集は種の構成や個別種の形質(サイズ、生息域、食物など)が異なっている。さまざまなスケールの環境変化が野生生物群集に与える影響は、あまりよく知られていない。
Jeffrey Haightらは、725台のカメラトラップから得られたデータを用いて、都市の土着哺乳類群集の構成と、それぞれの種の相対的な生息場所利用状況(occupancy)を評価した。カメラトラップが設置されたのは、米国のシカゴ、ロサンゼルス、アトランタ、オースティン、そしてカナダのエドモントンなど、北米の20都市だった。画像からは、アメリカクロクマ、シマリス、クーガー、オジロジカなど、37種の土着哺乳類が特定された。種の生息場所利用状況と多様性は、気温が高く植生に乏しい都市の方が、都市化との負の関連性が極めて強いことが明らかになった。例えば、気温が同等の他都市よりも緑の植生が豊かなフロリダ州サンフォードは、植生の乏しいアリゾナ州フェニックスよりも多様性の高い哺乳類群集を支えていた。一般に、都市の中の都市化が進んだ地域(地表面の不透水性被覆率の高い地域)や高度に都市化した都市ほど種の多様性は低く、その悪影響は小型哺乳類よりも大型哺乳類の方が大きかった。
研究チームは、局地的野生生物群集に対する都市化の影響を評価するに当たっては地域の環境的状況を考慮すべきだと結論付けている。
doi:10.1038/s41559-023-02166-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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