気候変動:カナダの高緯度北極域における永久凍土の融解と地形の変化
Nature Communications
2023年9月13日
カナダの高緯度北極域の実地調査データに基づき、この地域で起こっている永久凍土の融解と重大な環境変化の原因が地球温暖化の加速である可能性を示唆する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、カナダ北極諸島の一部地域の60年間にわたる地形進化を再構築した研究によって得られた。
北極では1980年代以降に気候温暖化が増幅され、永久凍土の融解の加速が、北極の地形に深刻な影響と劇的な変化をもたらしている。永久凍土の融解は、蓄積されていた膨大な量の炭素の放出を引き起こし、地球温暖化を加速させるため、非常に重要な意味を持つ。しかし、カナダの高緯度北極域の地形の変化に影響を及ぼす物理過程は解明されていない。
今回、Shawn Chartrandらは、2019年に収集された野外観測結果、物理モデル、環境データを用いて、アクセルハイバーグ島のマスコックス渓谷(Muskox Valley)における永久凍土融解の初期段階の地形の変化と河道の発達を調べた。そして、これらのデータを1959年の航空写真と比較して、この地域の地形進化に関する60年の歴史を再構築した。その結果、この地域の新しい河川網の構造と進化が、永久凍土の融解に関連する幾何学的な地盤パターンの進化の影響を受けていることが分かった。現在の温暖化気候の下では、谷床の基盤の浸食速度と氷楔の熱劣化速度が局所的に加速され、時間の経過とともに地盤崩壊につながる可能性がある。また、非永久凍土地域での水路の発達を予測するために一般的に使用される諸要因は、北極の地形進化に影響しないことも明らかになった。
今回の知見は、夏季の変動性増大を特徴とする気候温暖化に対する北極と標高の高い永久凍土地域の地形の応答を支配する根本的なプロセスに関する理解を深めるものとなる。
doi:10.1038/s41467-023-40795-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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