PTSD治療薬:MDMAを用いる治療は多様なPTSD患者に効果がある
Nature Medicine
2023年9月15日
3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)を用いる治療によって、中程度から重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された民族的・人種的に多様な人たちの症状と機能障害が軽減されることが、第3相臨床試験の結果から明らかになった。この知見は、臨床試験に通常参加することが少ない人々から得られたものであり、MDMAを用いる治療の安全性と効果を実証した前回の第3相試験の結果が確認・拡張された。
J Mitchellらが行った前回の第3相試験では、MDMAを用いる治療は忍容性が高く、重症のPTSD患者の症状の程度と機能障害を軽減するという主要評価項目、副次評価項目が達成できることが明らかになった。しかし、このような知見が、PTSDの症状が中程度の患者やPTSD発症リスクが他に比べて非常に高い人たちでも一般化できるかどうかは不明だった。心的外傷への曝露の程度にはかなりの差異があり、民族的、あるいは人種的マイノリティーのPTSD発症リスクは、トランスジェンダーやジェンダーが多様な人々、ファースト・レスポンダー(災害、事故などの初期対応を行う消防隊員、警察官など)、軍人、退役軍人、長期的な性的虐待の被害者と並んで、並外れて高い。
Mitchellらは今回、中程度から重度のPTSDと診断された104人の参加者に対してMDMAを用いる治療とプラセボを用いる治療(対照群)を18週間にわたって行い、その効果と安全性を評価するという無作為化第3相臨床試験を行った。試験の参加者は民族的また人種的に多様で、34%は白人以外の人種であることを自認し、27%はヒスパニックまたはラテン系であることを自認した。Mitchellらは、PTSDの症状はMDMAを用いる治療の方がプラセボの場合よりも軽減したと報告している。MDMAを用いる治療群では、研究終了までに参加者の71.2%がPTSDの診断基準に該当しなくなったが、プラセボ治療群で該当しなくなったのは47.6%だった。また、MDMAを用いる治療は忍容性が高く、死亡や重篤な副作用は確認されなかった。
Mitchellらは、これらの知見によって前回の臨床試験での観察結果が確認・拡張されたと結論しており、MDMAを用いる治療はPTSD患者の幅広い集団に対しても有効である可能性が示唆されたと述べている。
doi:10.1038/s41591-023-02565-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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