健康:月経周期の時期がインスリン感受性に影響する可能性がある
Nature Metabolism
2023年9月22日
インスリンに対する脳の感受性は、月経周期の時期に応じて変化している可能性があることを示した論文が、Nature Metabolismに掲載される。この知見は、11人の女性が参加したランダム化臨床試験に基づいている。
これまでの研究で、脳がインスリンに感受性を持つことと、インスリンが脳の特定のニューロンに影響することが実証されている。また、インスリンが摂食行動や全身の代謝の調節に影響することも明らかになっている。さらに、脳のインスリンによる全身の代謝の調節に性差がある可能性も示唆されているが、これらの研究は大部分が男性で行われたものである。
今回Martin Heniらは、月経周期の卵胞期(排卵に向けた周期の初日)から黄体期(排卵後の周期最終日)にある11人の女性を対象に、脳のインスリン活性の影響を調べた。女性たちは、インスリン感受性を測定する方法である高インスリン正常血糖クランプ法を4回受けた。脳のインスリン活性は、インスリンの鼻腔内投与を行って、非インスリンプラセボ噴霧と比較して測定した。測定の結果、月経周期の卵胞期には脳のインスリン感受性が上昇するが、黄体期には感受性上昇は観察されないことが明らかになった。さらに別の15人の女性で機能的MRI検査を行い、脳の特定領域(視床下部)におけるインスリン感受性を調べたところ、卵胞期には同様のインスリン感受性上昇が観察されたが、黄体期には上昇は見られなかった。Heniらは、脳のインスリン感受性は月経周期の卵胞期に高くなり、黄体期には脳のインスリン抵抗性が全身のインスリン抵抗性に寄与している可能性があると述べている。
関連するNews & Viewsでは、Nils Kroemerが、「この研究によって、全身のインスリン感受性の月経周期による調節に脳内のインスリンが重要な役割を果たしている証拠が得られた。観察された視床下部のインスリン感受性上昇から考えて、中枢のインスリン感受性が低くなっている月経前(すなわち黄体期後期)に見られるという報告の多い体重調節や食欲、大食い行動の変化は、視床下部から動機付け回路への投射の変化である程度説明できる可能性が高い」と述べている。
doi:10.1038/s42255-023-00869-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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