古生物学:三葉虫は何を食べていたのか
Nature
2023年9月28日
消化管の内容物が保存された4億6500万年前の三葉虫の化石が発見されたことを報告する論文が、今週のNatureに掲載される。三葉虫は、最もよく見られる、最もよく知られた化石節足動物の1つであり、今回発見された化石は、三葉虫の食性や生活様式を解明する手掛かりとなる。
カンブリア紀前期からペルム紀末まで(約5億4100万~2億5200万年前)の約2億7000万年の歴史の間に、2万種以上の三葉虫が生息していた。三葉虫の化石標本は数多く存在しているが、三葉虫の食性は間接的に推測されるだけだった。これは、消化管の内容物が含まれた化石標本の発見が報告されていないことによる。
今回Petr Kraft、Per E. Ahlbergらは、現在のチェコ共和国にある中期オルドビス紀の地層(約4億6500万年前と年代決定された)から発見された化石三葉虫(Bohemolichas incola)について報告している。この化石三葉虫の消化管には、貝虫類、ヒオリテス類、二枚貝類、stylophoran(棘皮動物の一種)などの海洋生物の殻の断片がぎっしりと詰まっていた。著者らは、B. incolaが日和見的な腐肉食生物だったという見解を示している。この三葉虫は、動物の死骸か生きた動物を食べており、簡単に破砕できそうな動物なら噛み砕き、小さな動物なら丸呑みにしていたという。
この三葉虫が死ぬと、別の腐肉食生物の餌となった。今回報告された化石標本には、この第2の腐肉食生物が垂直方向に移動した痕跡も見つかった。この腐肉食生物は、三葉虫の死骸に潜り込み、軟部組織を標的としたが、消化管は避けていた。このことは、三葉虫の消化器系の内部が有害な状態で、酵素活性が持続していた可能性があることを示唆している。
doi:10.1038/s41586-023-06567-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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