天文学:月面での道路建設への小さな一歩
Scientific Reports
2023年10月13日
レーザーを使って月の土壌を溶かして、より堅固な層状物質を作製するという方法で、月の表面に舗装道路や宇宙船の着陸パッドを建設できる可能性があることが、概念実証研究で確認された。このことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。これらの実験は、月の塵の代替物質を使って地球上で実施されたものだが、今回の知見は、この方法の実行可能性を示し、月で再現できることを示唆している。ただし、著者らは、この作製過程を洗練させるためにさらなる研究が必要かもしれないと述べている。
月の塵は月面探査車にとっての重大な課題だ。重力の小さい月では、月面探査車の通過によって月の塵が舞い上がる傾向があり、機器に損傷を与えることがあるからだ。そのため、道路や着陸パッドといったインフラは、塵の問題を緩和し、月面での輸送を容易にするために必須だ。しかし、建設資材を地球から輸送すると高いコストがかかるため、月で利用できる資源を利用することが不可欠となる。
今回、Ginés-Palomares、Miranda Fateri、Jens Günsterらは、EAC-1Aという細粒材料(欧州宇宙機関が開発した月の土壌の代替物質)をCO2レーザーで溶かすことで、月で太陽放射を集光させて月の塵を溶かして堅固な物質を作製する過程のシミュレーションを行った。著者らは、さまざまなレーザー出力(最大12キロワット)とレーザースポット直径(最大100ミリメートル)を設定して、ロバストな物質を作製する実験を行った。しかし、レーザー光の経路が交差したり重なったりするとひび割れが生じることが実証された。著者らは、直径45ミリメートルのレーザー光を使って、幅と奥行きが約250ミリメートルの三角形の中空の幾何学的形状を作り出す方法を開発した。著者らは、この幾何学的形状は連結することができ、月の土壌の広い範囲に堅固な表面を作り出し、道路や着陸パッドとして利用できるかもしれないという見解を示している。
著者らは、この作製方法を月で再現するには、レーザー装置の代わりに用いられる太陽光集光器に使用される約2.37平方メートルのレンズを地球から輸送する必要があると計算している。このように必要な機器のサイズが比較的小さいことは、将来の月探査ミッションで利点になると考えられる。
doi:10.1038/s41598-023-42008-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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