人類学:海藻類は古代ヨーロッパ人の食料確保に役立っていたかもしれない
Nature Communications
2023年10月18日
古代から少なくとも中世までのヨーロッパでは、海藻類や水生植物が重要な食料源だった可能性があることを示した論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、古代人の歯石の化学分析に基づいたものであり、新石器時代から中世前期にかけてのヨーロッパ人の食生活についての我々の理解を深める。
海藻類は、現代では特にアジアで食されているが、ヨーロッパで海藻類と淡水生植物が消費されていたことを示す考古学的証拠は少ない。新石器時代になると、農耕と土地所有がヨーロッパ全土に広がって、海産食品は重要性がほとんど失われたか、全く顧みられなくなったと考えられている。これまでの研究から、海藻類は燃料、動物用飼料、食品包装材や肥料として用いられていたことが示唆されている。
今回、Stephen Buckley、Karen Hardyらは、中石器時代から新石器時代、初期農耕時代を経て中世までのスコットランドからスウェーデン、エストニア、スペインに至るヨーロッパ各地の古代人の遺骸の歯に付着した歯石を調べた。そして、歯石から見つかった化学的指標を、海産食品と水生植物食品の具体的な原料と関連付けた。その結果、著者らは、水生植物食品と海洋植物食品が中世後期までヨーロッパ全域で日常的に消費されていたという見解を示している。
著者らは、今回の知見によって、新石器時代から中世前期、そして現代において、海洋植物と水生植物が地域の持続可能な食料源として使用できる可能性が浮き彫りになったと述べている。
doi:10.1038/s41467-023-41671-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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