医学:構造的に修飾された抗真菌薬はマウスに対する毒性が低下した
Nature
2023年11月9日
構造的に修飾された抗真菌薬が新たに開発され、抗菌特性を保持しつつ、マウスとヒト腎細胞に対する毒性が低下したことを報告する論文が、Natureに掲載される。この研究の前進により、致死的な真菌感染症に対処するために用いられる抗真菌薬の臨床的有効性と安全性が高まるかもしれない。
アンホテリシンB(AmB)は、細菌が産生する物質による抗真菌薬であり、数十年間にわたって重症真菌感染症に対する最終防御線として使用されてきた。体内に入ったAmBは、スポンジ状の凝集体を形成し、この凝集体がエルゴステロール分子(細菌や真菌の細胞に存在し、哺乳類のコレステロールと同様の機能を果たす)に結合することで、感染症防御を達成する。AmBがエルゴステロールに結合すると、真菌の細胞膜からエルゴステロールが抽出され、真菌の細胞死につながる。AmBは有効な抗真菌薬だが、ヒト、特に腎細胞に対する毒性が強い。しかし、この腎毒性の発現機構が、真菌の細胞死を引き起こす機構と同じかどうかは明らかでない。
今回、Martin Burkeらは、ステロール類に結合する分子の一部を修飾することによってAmBの類似化合物を作出し、これらの修飾が生物活性にどのように影響するかを観察した。これらの類似化合物は、ヒト腎細胞を使って検証され、AmBが腎細胞膜に結合してコレステロールを抽出することが腎細胞死の原因と特定された。次にBurkeらは、真菌のエルゴステロールには結合して抽出できるが、哺乳類のコレステロールには結合・抽出できないために腎臓への毒性作用が軽減されるAmBの変種を設計した。こうして得られた化合物(AM-2-19と命名された)は、ヒト腎細胞とマウスにおいて抗真菌治療薬として高い有効性を維持しつつ、腎温存効果が認められた。また、AM-2-19は、他の治療薬と比べて、抗菌薬耐性が生じてもその後の回復力が強かった。
この作用機構は、多くの抗真菌分子にわたって保存されており、Burkeらは、この技術を用いることで、他の薬物療法についても毒性を低減し、その結果、臨床的有効性を高めることができるかもしれないと示唆している。
doi:10.1038/s41586-023-06710-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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