二官能性分解薬:分解薬が皮膚疾患の治療に有望という臨床試験の初期結果が明らかになった
Nature Medicine
2023年11月13日
化膿性汗腺炎やアトピー性皮膚炎といった皮膚疾患の治療に使える可能性のある薬が、第1相臨床試験によって明らかになった。
ヘテロ二官能性の分解薬は、一部のタイプのがんを含むさまざまな病気の治療薬の候補として期待される分子で、細胞のタンパク質分解系を乗っ取ることで作用する。この分解薬は、目的のタンパク質に目印を付けると同時に、細胞内でタンパク質分解を行う分子に結合し、目的のタンパク質を小さい断片に分解する。このようにして、損傷を受けたタンパク質や有害な恐れのあるタンパク質が中和できる。しかし、こういった薬物を患者で検証した臨床試験の査読付き報告はこれまで発表されておらず、これまでの報告は学会発表の要約に限られていた。
Jared Gollobらは、KT-474と呼ばれるヘテロ二官能性分解薬を開発し、臨床試験を行った。KT-474は、皮膚疾患をはじめ、ある種の自己免疫疾患に関与する酵素IL-1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)を標的とする。Gollobらは、任意の健康な被験者105人に、単回経口投与か連日14日間経口投与のどちらかを行った。その後、化膿性汗腺炎あるいはアトピー性皮膚炎の患者21人に、KT-474を28日間連日投与した。その結果、KT-474によってIRAK4が効率よくタンパク質分解の標的となることと、この薬が健康な被験者にも患者にも安全なことが明らかになった。また、Gollobらは、これら2つの皮膚疾患患者の皮膚病変と症状が改善されるKT-474の投与量も明らかにした。
Gollobらは、中程度から重度の化膿性汗腺炎とアトピー性皮膚炎の患者で行ったこの予備的な臨床試験結果は、さらに第2相臨床試験へと進むための根拠になると述べている。
doi:10.1038/s41591-023-02635-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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