生物科学:胎盤の炎症は特定の成人期疾患に関連しているかもしれない
Nature Communications
2023年11月15日
妊娠中の胎盤の炎症が、乳児の成長後の心血管疾患や精神疾患に関連している可能性のあることを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の知見から、胎盤のホフバウアー細胞の機能喪失が心血管疾患や精神疾患のリスク増加に寄与する可能性が示唆された。
感染に反応した胎盤の炎症は、胎児が成長した後の健康転帰に関連することがこれまでの研究で示されているが、この種の研究では環境要因によって紛らわしい結果が得られる場合がある。ホフバウアー細胞は、免疫細胞の一種で、胎盤における免疫防御にとって重要なことが知られている。しかし、成人の健康転帰に対するホフバウアー細胞の寄与はよく分かっていない。
今回、Eamon Fitzgeraldらは、胎盤炎症と胎児の健康転帰の関連を調べた。その際に用いられたのが、英国のコホートとシンガポールのコホートから遺伝的に予測された遺伝子発現シグネチャーで、この遺伝子スコアを用いることで、胎盤の直接測定をせずに大規模コホートにおけるホフバウアー細胞の機能を推定することができた。その結果、別のタイプの細胞における遺伝子発現を調べる過去の研究の成果に基づいた炎症関連遺伝子発現シグネチャーが、ホフバウアー細胞に関連しているかもしれないことが明らかになった。また、この遺伝子発現シグネチャーは、成人の心血管疾患とうつ病の転帰に関連していることが分かった。さらに、薬物相互作用データベースに基づいて、アスピリンが胎盤炎症の修飾因子候補となるかもしれないことも判明した。ただし、アスピリンがいい効果をもたらすのか、悪影響を及ぼすのかを特定するためには、さらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/s41467-023-42300-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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