地球科学:地震信号はいくつかの大地震の予測を改善するために役立つかもしれない
Nature Communications
2023年11月29日
2023年にトルコで発生したマグニチュード7.8のカフラマンマラシュ地震は、シリアでも強い揺れが観測された。こうした大地震の一部については、発生の数カ月から数年前に特有の地震信号を検出できる可能性があることを示した論文が、Nature Communicationsに掲載される。著者らは、地震警報システムの開発において、地震検知のための局地的・地域的ネットワークだけでなく、破壊される主断層に付随する二次断層のモニタリングも充実させる必要があるとする見解を示している。今回の知見によって、将来のいくつかの大地震を予測する能力を高められるかもしれない。
人々に地震の発生を警告し、重要インフラを地震から守るという緊急の社会経済的必要性があるにもかかわらず、地震の規模、発生時期、震源位置の短期予測は現在のところ不可能だ。地震発生に至る過程は、数カ月から数年という長期にわたる場合があり、それをモニタリングし、認識できる可能性がある。しかし、こうした過程を監視し、来るべき大地震の指標となる地震信号を識別することは、依然として難しい課題だ。2023年2月6日に大規模な地震が東アナトリア断層帯を襲い、トルコとシリアで広範囲にわたって被害と犠牲者を出した。破壊は二次断層から始まり、主断層に伝播していた。
今回の研究で、Patricia Martínez-Garzónらは、カフラマンマラシュ地震の震央から65キロメートル以内の領域において、地震発生の約8カ月前から震動事象の発生頻度の加速とエネルギー放出量の増加がクラスター状に発生していたことを明らかにした。カフラマンマラシュ地震における主破壊は、断層上の、以前に地震発生ポテンシャルが非常に高いと判定された領域で発生していたが、地震の準備過程の信号は、主断層と、これまでほとんど注目されていなかった二次断層の両方で起こっていた。大地震の一部は、その準備期のモニタリングができる可能性があるが、Martínez-Garzónらは、多くの変数が関係するため、準備期の信号を認識し、地震の中期予測に活用することは依然として困難だと指摘している。
今回の知見は、大地震の準備期と破壊核形成期の検知に伴う課題を明確に示している。Martínez-Garzónらは、準備現象を十分に理解することが将来の地震警報システムの開発にとって必要だとする見解を示している。より包括的な地震モニタリングと長期的な地震記録を合わせることで、その他の一時的に生じた地域的な変形から地震準備過程を識別する能力を高められるかもしれない。
doi:10.1038/s41467-023-42419-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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