遺伝学:アフリカにおけるバントゥー語の歴史を探究する
Nature
2023年11月30日
アフリカのサハラ砂漠以南に存在するバントゥー語話者の非常に大きな集団は、西アフリカを起源として、その後、南方と東方に徐々に持続的に居住域を拡大していった可能性が非常に高いことが研究によって示された。このことを報告する論文が、Natureに掲載される。今回の研究では、現代人と古代人の遺伝的解析から、バントゥー語話者の進化史に関する新たな知見が得られた。バントゥー語話者の人口は、約6000~4000年前に西アフリカで増え始めた。
バントゥー語族は500以上の異なる言語で構成されており、サハラ以南のアフリカ全体で約3億5000万人がバントゥー語を話している。バントゥー語話者集団の拡大パターンは経度に沿ったものであり、さまざまな気候や環境を通過していた点は注目に値する。これは、緯度に沿って移動し、類似した地形を横断することよりずっとまれなことだった。
今回、Carina Schlebuschらは、1763人の現代人のゲノムデータセットを照合した。その内訳は、147集団に属するバントゥー語話者1526人とそれ以外のサハラ以南のアフリカの住民237人で、過去の遺伝学的研究で解析対象にならなかった117集団のバントゥー語話者も含まれており、これによってバントゥー語族の主要な語派が全て研究対象となった。これに加えて、現在のザンビアと南アフリカに所在する後期鉄器時代の遺跡で出土した12体の遺骨(97~688年前のもの)から採取されたDNAの塩基配列が解読され、古代のバントゥー語話者の移動パターンの歴史に関する知見が得られた。Schlebuschらは、遺伝的モデル化、言語的モデル化、地理的モデル化を併用して、バントゥー語話者の集団の歴史と移動を分析した。
遺伝的データから、バントゥー語話者の集団は西アフリカを起源とし、コンゴの熱帯雨林を通ってアフリカの東部と南部に拡大したことを示す証拠が得られた。Schlebuschらは、バントゥー語話者集団の発祥地からの距離が長くなるにつれて遺伝的多様性が低下するというパターンを観察した。また、こうした分析から、バントゥー語話者集団と先住民群の間で混合があった証拠が得られ、それも集団の発祥地からの距離が長くなるとともに減少していた。この相関関係は、バントゥー語話者集団が移動する際に多様な気候や地形を通過したにもかかわらず、この集団が拡大する勢いが比較的一定であったことを示唆している。そして、現在のザンビアとコンゴ民主共和国が、異なる語派の間の相互作用があった地点であり、バントゥー語話者の集団の拡大にとって重要な地点だったことも明らかになった。
以上の結果は、アフリカの集団に関する将来の研究のための貴重な情報資源であり、これらの集団における遺伝的変異や健康を研究するための情報資源にもなる可能性がある。
doi:10.1038/s41586-023-06770-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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