環境:山火事による有害金属の脅威を評価する
Nature Communications
2023年12月13日
山火事によって生じる発がん性重金属(クロムなど)が公衆衛生上のハザードとして過小評価されている可能性を指摘した論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の知見は、山火事の煙への曝露が、他の原因による汚染よりも人体に有害である理由を明らかにするための新たな手掛かりになっている。
山火事は、気候変動のために多くの地域で頻度と深刻度が高まると予想されており、これは、煙と粉塵の吸入による公衆衛生上のリスクが増加することを意味する。微小粒子状物質(PM2.5)は肺の深部まで侵入するため、PM2.5の吸入曝露は特に大きな問題になっている。都市部の火災はよく研究されているが、山火事によって発生する粒子状物質の化学組成やそれぞれの化合物に特有の健康影響は十分に分析されておらず、土壌や植物に自然に存在する金属が火災によって有毒金属に変性することによる健康への脅威も明らかになっていない。
今回、Alandra Marie Lopezらは、2019年と2020年にカリフォルニア州北部(ソノマ郡、ナパ郡、レイク郡など)で発生した山火事の跡地の土壌と灰を分析した。山火事の灰は、簡単に風に乗って長い距離を飛散するが、この灰の中に、生物が利用可能な反応性クロムが危険な濃度で含まれているという分析結果が得られた。この結果は、金属が豊富に含まれる地質の地域で最も多く見られ、山火事の深刻度が高かった地域でも多く見られる傾向があった。また、山火事の燃焼による表面土壌中の反応性クロムの濃度上昇が、山火事の発生から最長約1年間続いたことも判明した。Lopezらは、乾燥した環境では、継続的な粉塵の発生と風による飛散のために、反応性クロムが長期的な吸入ハザードをもたらす可能性があるという見解を示している。
都市部の火災では煙や粉塵に含まれる金属への曝露による脅威が認識されているが、今回の知見は、山火事が発生した地元のコミュニティーや現場に最初に駆けつけるファースト・レスポンダーに対する公衆衛生上のハザードを明確に示している。Lopezらは、気候変動を原因とする世界的な山火事の増加に伴い、山火事発生後に排出される粉塵に含まれる金属の脅威も増している可能性があると指摘している。
doi:10.1038/s41467-023-43101-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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