エネルギー:英国の生活費危機において、暖房に苦労したことが生活満足度の低下に関連していた
Scientific Reports
2023年12月15日
英国で2022~2023年の冬に快適な暖房が得られなかった人々は、得られた人々と比べて生活満足度が有意に低かったという知見を報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。今回の研究では、この期間中に多くの英国の家庭でエネルギー消費行動が大きく変わったことが明らかになり、今後のさらなる省エネ行動を後押しできる方法を洞察する機会がもたらされた。
2022~2023年の冬は、英国を含む世界のほとんどの地域で家庭のエネルギー費が大幅に増加した。これは、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の余波で、それまでの世界のエネルギー市場の歪みが世界的なエネルギー危機に発展したことによる。この危機が英国の家庭に及ぼす経済的負担以外の影響は、今のところよく分かっていない。
今回、Gesche Huebnerらは、2023年2~4月にSmart Energy Research Labプロジェクト(SERL)の参加者(約5400人)に対して質問票調査を実施し、参加者の暖房確保能力と生活満足度が関連しているかどうかを調べた。Huebnerらはまた、参加者が今回のエネルギー危機のためにエネルギー消費行動をどのように調整したかについても評価した。参加者全員の住居にはスマートメーターが設置され、その情報を表示するディスプレイ(IHD)が室内に配置された。今回の調査結果は、2019~2021年に参加者がSERLに登録する際に記入を求められた質問票による当初のベースライン調査結果と比較された。
暖房の確保に苦労したと回答した参加者は、そうでない参加者よりも生活満足度が有意に低く、0(最も低い)から10(最も高い)までの生活満足度において1.78ポイント低かった。また、2023年2月に参加者が自己申告したサーモスタット設定温度の平均値は、ベースライン調査時の20.22℃から1℃以上低下して19.20℃となり、住居内に通常は暖房していない部分があると回答した参加者の割合は35.5%から52.1%に上昇した。さらに、前年の冬よりもIHDを使用する頻度が高くなった参加者は、省エネにより大きな努力を払ったことも判明した。
以上の結果について、Huebnerらは、スマートメーターを設置した世帯だけがSERLに参加できるため、今回の調査結果を英国の全世帯に一般化できない可能性があると指摘した上で、今後の研究で、2022~2023年のエネルギー危機が英国の公衆衛生に及ぼした影響をもっと広い観点から詳細に調べるべきだと述べている。またHuebnerらは、参加者の12.8%が、住居内のIHDが故障していて、エネルギー消費量を削減する取り組みの妨げになっていると回答したことから、IHDのメンテナンスを充実させる必要があることも強調している。
doi:10.1038/s41598-023-48181-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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